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ザクザクと仕事を右に左にこなしているうちに一日が終わった。昼は昨日のカレー、夜もそのカレーの残りを食べ、つまり5食分ということ?夜はそれでは足りなかったので、白菜とニラ、さつまいもにぶなしめじと豚肉を、醤油とみりんで煮る、という何なのか全然わからないけどまずいわけがない料理を作った。強いて言うなら、けんちん汁に近い?

ビレ・アウグストは僕にとって少しだけ特別な作家なので、『リスボンに誘われて』も(超つまらなそうなタイトルだが)それなりに襟を正して観た。暗い部屋でジェレミー・アイアンズが一人チェスを指す冒頭のシーンで、主人公・ライムントの途方も無い孤独と退屈を一瞬で説明してしまう。そうした直球の心情描写とおおらかな比喩には派手さはないが、手練を感じてとても心地よい。

橋の上から身を投げようとしていた女性が持っていた本から、リスボン行きのチケットが落ちてくる。そこで駅まで向かうのだが、女性は現れなかったので衝動的に電車に乗ってしまうライムント。帰ればいいのに。電車の中で目を通したそのポルトガル語の本が自分の心情をあまりに言い当てていたことに心奪われてしまったライムントは、リスボンでその本の著者・アマデウのゆかりの人々を訪ねることで、彼の過去を追体験しようとする。その過程で、ポルトガルの独裁政権下でレジスタンスとして生きる人々の物語を知り、その躍動するような人生を照らし合わせて、自分の人生の退屈さを痛感する。

アマデウが著書で語る、「孤独」「偶然」についての哲学が、人生も終盤に差し掛かったライムントの衝動を説明する。その瞬間、街路を行く自転車と衝突して割れてしまう眼鏡。ライムントは新しい眼鏡を作ろうと眼科へ向かう。そこで作ってもらった新しく軽い眼鏡が彼の視界を再び開いていくのだが、その環境に拒否反応を示す彼に対して眼科医は言う。「じきに慣れますよ」

新しい人生は、偶然と衝動に支えられて目の前に開花する。あとは、慣れる。それだけ。

MCATM

@mcatm

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