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『殺人鬼の存在証明』/みんな最低

『チェイサー』『悪魔を見た』『オールド・ボーイ』。ロシア映画ながら、(俺たちの大好きな)韓国ノワールの面白いところ全部詰め合わせたような、ロシアンクライムサスペンスの大傑作。個人的には、何よりポン・ジュノの傑作『殺人の追憶』を思い出したが、こちらはあれの「スッキリする版」だからたまんない。

気を失わせた被害者に土を食わせ、意識を取り戻したタイミングで逃げ出すその背後から、刃物でめった刺しする。チカチロオマージュ(途中、追加でちょっとしたチカチロ目配せもあるほど)な、女性を狙った連続殺人事件。過去に主人公が解決したはずだったその事件と同じ手法の事件が発生し、誤認逮捕が発覚する。自身の昇格パーティーなのに別室でモノに当たり散らして落ち込み、閉じこもって妻と口論する主人公。いくつものコンテクストをいっぺんに語るやり口も鮮やか。

物語は、主人公着任当初の1981年からの捜査状況と、現在1991年を交互に行き来しながら、いかにして誤認逮捕が発生するのか、それが今、どのように行き詰まっていくのかを描いていく。過去に殺人鬼「チェスプレイヤー」の難事件を見事解決した手腕を買われ、捜査チームの主任に抜擢された主人公はやり手との触れ込みだが、蓋を開けてみたらとにかくめちゃくちゃ。こいつが異様に暴力的であることも、大丈夫、先述のパーティーシーンでしっかり脳裏に刻み込まれている。なんでもいいから早く事件を収束させたい上層部の思惑も絡み、事態は迷走を極める。

この事態を収拾するのは誰なのか。そして、本当に罪深いのは誰なのか。双子、姉妹、相棒、対になる存在が次々に現れ、大罪にふさわしい処刑方法が提示される。本筋には全く関係なさそうな小ネタの数々、特に被害者の死体と加害者が一緒に拘束されたまま黒くなるまで放置される「エトルリアの処刑」というあまりに強烈なエピソードなども、しっかりと後半の物語に効いてくるような仕掛けがあり、オチの付け方もあまりに見事だったので、衝撃に舌を噛みそうになった。一般的なフーダニットものより、ある程度の展開は予想しやすいが、「何でそんなことになるかね」と人間存在への絶望感に空虚な衝撃を覚えるのである。

大いに非現実を感じる後半の展開に難色を示す方もいらっしゃるだろうが、俺は「大ケレン味」として許せるレベルにあると思う。というか、この混乱は、あれぐらいの博打がないと解決せん!とにかく、ネタバレする前にチェックして。

MCATM

@mcatm

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