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『選挙2』

想田和弘監督の観察映画第5弾。

『選挙』で過酷なドブ板選挙を戦った山さんこと山内和彦氏が、全く別の人間になってしまったような印象を受けて驚く。完全無所属として出馬しているにも関わらず、どこか他人事。前回選挙を自民党の議員として当選した経験もあって、地元の政治家について詳しいので、「政治通の愉快犯」にしか見えない。

そのトリックスターがへらへらと選挙について語り続ける前半部から一転、中盤以降は必然的に訪れる「山さんの不在(だって、選挙活動しねえって言うもんだから…)」を通して、現行の「選挙制度」に対する疑問が浮き彫りになる。観察映画が浮かび上がらせたテーマと、山さんの主張、その2つの線がピタッと一本に重なるところに、物語的な面白みを感じてグイグイと引き込まれていく2時間29分であった。最高にキャッチーな二人の議員との対立(「小学生でもわかるでしょ」「要望ではないです」などのキラーフレーズに身も心も凍る)、地道なビラ配りとティッシュ配りの対比、同士との会話など、単なる日常風景をまるでミステリーのように感じさせる構造が観察映画の面白さ、エンタティメントとして成立する所以だと今回も痛感した。振り回された想田監督が漏らした愚痴に対してあまりに的確な感想を返す山さんに、観察映画の主客が反転したこと、それと同時にこの映画は全編通して(至る所で『選挙』を撮った監督としての立ち居振る舞いが要求される)想田監督を主人公にした物語でもあったことに気づかされる、この構成も見事。

あとこの映画は予告を観ても分かる通り、極上の息子映画。息子映画好きには是非オススメしたい。

チラシにも描かれた、防護服を着ての演説シーン。良くも悪くもまっすぐで嘘のない山さんの主張に多少なりともグッと来ないというのは嘘になるし、その横で全く無関係にはしゃぎまくる息子の姿も最高にキュート。どちらも、愛すべき無邪気さだ。このシーンでは、まるで漫画かコントのように、この映画が描いていたテーマが縮図のように現れ、それが雑踏に溶けていく演出も含めて、想田監督の作品の中でも最もエモーショナルで感傷的なものになっていたと思う。

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『選挙』もまた観返したくなった。

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