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パリ、ただよう花

映画におけるセックスって、例えば何らかの目的を果たすための手段だったり、単に欲望を身を委ねるためだったり(それも「目的を果たすための手段」)、実は体の良い道具として使われることがほとんどだったのかもしれない。この映画で頻繁に用いられるセックス描写と相対して見てみるとそんなことすら感じてしまう。ロウ・イエ監督最新作。中国人女性のホア(花)が、パリと北京を舞台に、色んな男とセックスをする話。

セックスを道具ではなく、単なるタイムラインに現れる一イベントとしてぐらいにしか捉えていないんじゃないだろうかと思うほど、ホアの「セックス」は唐突に現れ、淡々と描かれる。この映画の中で中心的に描かれるのは、パリに到着して間もなく出会った組立工のマチューとの恋愛であるが、それにしてもそもそもおそらく不倫関係にある男と最後のセックスをせがんで断られた直後の事であったし、あまりに特殊なマチューのやり方を経て、それでも彼に心を寄せる様に、このホアという人の貞操観念はどうなっているのか、と観客を動揺させる。その後も、「労働者階級のフランス人(たち)」は、「知的階級にある中国人」であるホアに対して、ちょっと信じられないような仕打ちを行うが、そもそも「出来事」とか「結果」への興味が薄いんじゃないだろうかと思ってしまうほど、ホアは淡々とマチューを愛し(愛し?)続けるのである。

彼女は男性に振り回されるようなか弱い女性としても、逆に跪かせ傅かせる強い女としても描かれない(自立心のある賢い女性としては描かれる)。ただ必要に応じて淡々とセックスする。そのハードルがあまりに低いため、観客は時にギョッとするのだが、そこに対する罪悪感のようなものも一切描かれない。(そう思うと、ある中国人男性との関係も、終わり近くのホアの行動も突然腑に落ちるものがある)そんなホアの心情を、POV作品なんじゃないかと思うぐらいグラグラと揺れる主観的なカメラが代弁するかのよう。(にしても、ブサイクなカットは一つもなく、根気強い見事な編集と美的感覚への忠誠の賜物だなあと関心)

ここまで即物的だと、「愛情」と「セックス」が分離しているとも言えるんだけど、もしかすると、愛とセックスの不可分性についての疑義を描いた作品なのかもしれない。観客百人に対して、百通りの解釈が生まれるだろうなと思わせるぐらい、何も押し付けない作品である。映画を観ることに能動性を見出すなら、観て損の無い作品だと思う。

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