Seed

Pavement、11年ぶりの来日公演に行ってきた!

東京にパラパラと降った小雨が影響したのか分からないが、スティーヴ・マルクマス(SM)を乗せた飛行機の到着が遅れ、我々新木場スタジオコーストに集った観衆を30分焦らした、再結成ペイヴメントのライブ。おそらく、人前に出しても恥ずかしくないペイヴアディクトであった(ある)僕は、「ソロになってからのSMは支持しない」「あの五人のグルーヴは失われた…永久に…」などと嘯いていた分、恥ずかしいぐらい取り乱し、朝から仕事も手につかぬまま、過去のペイヴメント話などをTweetしまくって呼吸を整えていた。

そんな再結成、再来日。

高校の頃に脊髄からペイヴメントに冒された僕は、何度かの来日公演を体験し、その度に猿のように興奮しながら感銘を受け、そして色んな意味でねじ曲がった音楽倫理を身につけるに至ってしまったわけだが、そのライブを目にするたびに気になっていた事があった。スコット a.k.a. Spiral Stairsのことである。

ペイヴメントにおけるSMの力が強くなるにつれ、ステージ上のスコットから笑顔が失われていった事を、僕は忘れる事が出来なかった。札幌くんだりまで来て、ニコニコとパンキッシュなギターストロークを見せ、初期R.E.M.におけるピーター・バックのようなアクションとサービス精神で、その日はSMよりも印象深かったかもしれない。その彼が、最後の来日、赤坂BLITZで、俯いたまま単調にギターを鳴らす姿を見て、このペイヴメントという蜜月はいつまでも続かないのかも、と思った。そして、その予感は残念な事に的中したのだった。

今日、ステージにスコットが現れたとき、僕は様々な意味で目を疑った。Preston School of Industryやソロで人前に出た姿を見るたびに確認してはいたことだが、時の流れの容赦なき事を感じさせる禿げて太ったその姿。しかし、あの笑顔!あのおどけ!無邪気にギターをかき鳴らす姿は、僕の初めて目にしたスコットそのものであった。自らの曲を歌っても、声は出ないし、節もかつてのものとは全く違う。そんな状態だけど、色んな意味で、初期のペイヴメントが持っていた無駄な威勢の良さ、気さくさ、ラフさがそこに現出した瞬間を目にし、これから僕は、10年以上待ちわびていたいたライブが遂に見られる事を確信した。

アンサンブルは最後の来日の時や、DVDで確認出来る演奏と比べても、お世辞にも完成されているとは言いがたい、ちぐはぐで、時折全く息が合わなくてやり直したり、それでもやり直さなかったりと、かなりデタラメなものだったが、何より望んでいた気の遠くなるほど平準化された世界に対する最後のデタラメとして機能していたバンド初期の(それこそギャリー在籍時の!)空気を連想させる、五人ならではのグルーヴ感に満たされていた。

下にセットリストを挙げる(一部、rockin'onのサイトを参照し、細かいところは再度確認した)。ド頭でアルバムの曲順通り二曲連続で始まったことからも予想は出来たが、「Crooked Rain」収録の楽曲や、「Slanted and Enchanted」からの楽曲が多かった。Shady Laneから徐々に調子を上げ、個人的にはIn The Mouth A Desertでこの日最初の絶頂を迎えた。この曲は、10年前よりも良いと思う。

1. silent kit (crooked rain, crooked rain)
2. elevate me later (crooked rain, crooked rain)
3. shady lane (brighten the corners)
4. frontwards (watery, domestic)
5. perfume-V (slanted and enchanted)
6. two states (slanted and enchanted)
7. gold soundz (crooked rain, crooked rain)
8. no life singed her (slanted and enchanted)
9. grounded (wowee zowee)
10. in the mouth a desert (slanted and enchanted)

Groundedでは、フロントの三人が同じ振りを。これは、本当に珍しい。

不覚にもUnfairから我を失い(家で聴いていても、大概この曲からスイッチが入る)、最前列近くで外人と踊り歌いまくるという状態に。「Watery, Domestic」のラストShoot The Singerから、本編ラストのStereoで、お決まりの大合唱。久しぶりに「ロック」なステージに我を失い、没入してしまった。この感覚、久しぶり…。

11. father to a sister of thought (wowee zowee)
12. kennel district (wowee zowee)
13. range life (crooked rain, crooked rain)
14. unfair (crooked rain, crooked rain)
15. we dance (wowee zowee)
16. cut your hair (crooked rain, crooked rain)
17. fight this generation (wowee zowee)
18. summer babe (slanted and enchanted)
19. shoot the singer (watery, domestic)
20. stereo (brighten the corners)

アンコールでプレイしたStop Breathin'を聴きながら考えていたのは、DVDに収録されたラストライブのラスト四曲の事。本当に、ペイヴメントが終了する、そんなラスト四曲の中に、このStop Breathin'も含まれている。その映像を、僕は一度しか観れなかったが、これからはもう何度も観れるなあ、と思うと、なんか、ほっとした。

21. date with ikea (brighten the corners)
22. trigger cut (slanted and enchanted)
23. stop breathin' (crooked rain, crooked rain)

Twitterなどで出回っている画像を見るに、元々は演奏するつもりの無かったであろうBox Elderが二度目のアンコールで演奏され(信じられないぐらいボロボロの演奏だった!)、Conduit for Sale!で幕を閉じた。「i'm trying!!!!」

24. the hexx (terror twilight)
25. box elder (slay tracks)
26. conduit for sale! (slanted and enchanted)

ライブは終わり、奇跡が起こった。SMの投げたピックが、僕の足下に落ちたのである。何食わぬ顔でそれを拾い、震える手でポケットの奥深くにしまい、なんとなく運命的なものがそこにあるのだということを自己暗示にかけるように繰り返し、帰路についた。ロックが何かを変える事って、あるんだよ。そう思いたい。

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