6〜7年ぐらい前、沖縄の小さな離島で、観光地からちょっと離れたところにある小路を進んだところ、不思議な空間に入り込んでしまったことがある。不揃いな石が数個ずつまとめられた「塔」が、ぐるり並べられていたその光景に、誰かが(俺かもしれない)「入ってはダメな予感がする…」と呟くと、皆同意してそーっと退出した記憶が残っている。よそ者には与り知らぬなんらかの法則。そういう「不可侵な何か」の存在を信じさせる雰囲気というのは、確かにある。そして、そういったものに対する無理解や生来の無神経から、不敬を働く連中というのも、確かに存在している。
ケヴィン・コー監督による台湾映画『呪詛』は、土着信仰や民間伝承を取り扱う、所謂「フォークホラー」の一種。TiktokやYouTubeで配信されているような主観視点を主軸に、「決して入ってはいけない場所」を侵してしまった人々が体験する自業自得な悲劇を描いています。恐怖に心から震え上がった上、大変厭な気分をしばらく引きずっる羽目になったのですが、一方で大量の謎で構築された劇中世界には、思わず四度も観てしまうぐらい心惹かれてしまった。ただし、人によっては数日落ち込むレベルのショック映画でもあるので、ご利用にはご注意あれ。
ということで、ここでは映画の中で描かれていたことをベースに、気になったポイントと、現時点での個人的な解釈、「で、結局何だったのか」を自分なりにまとめておきたいと思います。なので、これ以降は大ネタバレ大会。映像の中で明確になっていなかったり、気づけていないヒントも沢山あるはずなので、その辺を補うため、邪推妄想と深読みを接着剤に組み立てたのが以下の文章です。俺自身、必ずしもこれが正解とは思ってないので、「こういうふうに考える人もいるのか…」ぐらいの温度感で読んでいただけたら幸い。
死生有名