フィリップ・シーモア・ホフマン『誰よりも狙われた男』
ジョン・ル・カレの原作を、アントン・コービンが監督したスパイ・サスペンス。ある不法入国者の存在を知りながら、より大物の逮捕に繋げるために泳がせているテロ対策捜査官のギュンター(フィリップ・シーモア・ホフマン)。諜報部員たちの暗躍と、種々の組織の思惑と、登場人物たちの行動が交錯して複雑化し、付いていけなくなることもしばしばのスパイ映画にしては、ここまですんなり理解できていいの?と訝しくなるほど明快な話運びでスッキリと見れたのには驚いた。
捜査と工作で浮かび上がってくる事実を、針の糸を通すかのような操作で繋ぎ合わせ、真実を手繰り寄せていく。到底うまくいくような代物ではないこの案件が、「ちょっと無理しすぎ」なトライアンドエラーの末の顛末に、俺も「F**K!!!!」と叫びそうになるぐらいの衝撃を受けた。余韻の尺も丁度いい。もう酒飲んで忘れたい。そんな気持ちになった。