Movie映画


  • ルカ・グァダニーノによる新作公開が楽しみなので、ダリオ・アルジェント版をチェック。聞きしに勝る快作だった。まさに「色彩の暴力!」って感じでクラクラするのと、全編を貫くゴブリンの怪演奏!!アルジェントの映画でも際立った一本だと思った。

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    で、改めてティザー観ると、アルジェント版と一致する場面がほとんどなく、これはこれでどうなるんだろうな…とワクワク。なんでレフンじゃなくて、グァダニーノなんだろう、って思ってたんだけど、これはこれで興味深いじゃん。絶対観る。

    mcatm2018-06-09 10:37

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  • 少女はめざめる。自らの内にある「食人嗜好」に、である…。ガハハハハ。

    粗暴な制度と艶かしくも爛れた性、そして数多くの「死」に囲まれた寮生活というゴリッゴリにストレスフルな環境で、食人の誘惑に苛まれていく少女の物語…。これだけ聞くと、「奇天烈さを狙ったカニバリズムもの」なんていう、超安易な企画を想像してしまうが、そうさせないのは作家の力。要は、「そこに行き着くまで」をどのように描くか、が肝でしょう。

    傍若無人な先輩との上下関係に見られるような階級制度的な抑圧、優等生としての立場と教授との軋轢、性的な抑圧、そして動物の生と死を扱い、食人に染まっていく罪の意識。こうしたストレスが丁寧に丁寧に積み重ねられていき、ちょっとした弾みでマグマのように表出してしまう怖さ。入学オリエンとか寮内行事とかで、ペンキやら豚の血(妄想)をぶっかけられたり、イニシエーション気取って生のうさぎの臓物食わされるような学校、俺はすっごい嫌だ。それが象徴的に表現されたパーティーでの衆人環視で行われる「食人パフォーマンス」と、雪だるま式に膨れたストレスがほとんど爆弾のように投げつけられるクライマックスが圧倒的である。

    初めて食人に手を出す「指」のシーンなど、カニバリズムを取り扱う映画では絶対に描かれなければいけない「食人シーン」を、丁寧に真正面から描いたのは本当に好感持てる。強烈な発疹に身悶え、掻きむしり、得体の知れぬストレスの表出として髪の毛を無限に吐き出す悪夢など、生理的に訴えかけるフレンチホラー風味の演出を駆使しながら、なんとも言い難いジャンルの映画を撮ったJulia Ducournau監督の手腕(なんと、クローネンバーグにすら似てない)。ちょっと恐怖趣味に走るとホラー、気取ればアート映画、と針が一気に触れちゃいそうなところを、良い塩梅で「奇妙な、どこにも属さない」映画を撮ったもんだなあと、感心する。パスカル・ロジェ『マーターズ』とか、『ハイテンション』みたいなものを想像すると、ちょっと裏切られるかも。音楽だけ切り取っても、良質なノイズミュージックとして聴けるレベルなんじゃないだろうか(ただ、切り取り方がギクシャクして、時間が止まってしまったように聴こえたところもあり、そこは勿体なかった)。

    主人公のGarance Marillierは、全体的に文字通り身体張った演技を見せてて、その底知れぬ魅力がこの映画の質を底上げしていると思う。終盤のクラブシーンで大股開き目をギラつかせる描写、あれは狂気通り越してほとんどギャグに近いところにあった。あれだけ悪夢的な光景を描いておいて、意外と夢オチが少ない。ラストの諦念溢れる、超覚醒した視点が一番怖かったわ。

    mcatm2018-02-11 11:14

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  • 失意の母が動く。実の娘を暴行の末に殺害した犯人を未だに逮捕出来ないでいる地元警察に業を煮やし、その署長を激しく非難する三枚の広告板を立てたことに端を発する騒動が、この物語の核である。

    単にそれだけの発端が、斜め上の展開を芋づる式に引き寄せ、あれよあれよという間によくわからない方向に上滑りした結論にたどり着いたので、画面が暗転し、スタッフロールが流れ始めた時には顎が外れたかと思うぐらい仰天した。「今年初の俺デミー脚本賞!」と興奮したが、巷でも何やらオスカー確実だとか、まあそれも納得の凄い脚本(個人的には、『ザ・ギフト』を思い出しました)。ネタを割ったからといってどうなる映画でもないが、そうした「驚き」も映画の価値の一部なので、それ以上のことはここには記さないでおく。

    監督はマーティン・マクドナー。全く知らなかったんですが、前作『セブン・サイコパス』はずっと気になっていた。「スランプの脚本家が7人のサイコパスを集めて脚本を書く」って、それだけ聞くと大体どんな話か想像付くものだが、これもその想像の範疇を遥かに超えたところで展開する物語が非常にスリリングな怪作(完成度は『スリー・ビルボード』に遥かに劣るけど…)。今なら、Netflixで観れます。

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    アンドレイ・ズビャギンツェフ『裁かれるは善人のみ』のようなシリアス胸糞映画かと思いきや、意外なことに全体的にブラックユーモアで強力にシュガーコーティングされており、サスペンスによる物語推進力も相まって、単純なエンターテインメントとして飽きずに楽しめる。巧みなのは、画面後方や端の方、または一瞬差し込まれる細かなカットで物語の仔細を悟らせるその語り口。一見コミカルな物語が展開している横で、別の世界が口を開けていたりする。例えば、ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ(大好き)演じる広告マン=レッドと、そのアシスタントの女性の関係は、時折差し込まれる窓越しのショットからしかほぼ描かれない。サム・ロックウェルと主人公フランシス・マクドーマンドが喧嘩腰で長々とやり取りしている背後でも、警官たちは直接関係しないような情報を絶えず提供している。言葉やシーンで説明されているわけではない、そうしたディテールが、物語の理解の一助になっている。そこには、地方都市特有の、差別意識や暴力、無理解や偏見があり、それらが時には荒々しく、時には思ってもいなかった形でポロッと顕現してしまう。魅力的なキャラクターが作者の手を離れて動き出している、その豊かさからにじみ出る「物語の奥行き」を体験する楽しさが、この映画の面白さの核の一つだと思った。

    リンチが監督しなかった『ツインピークス』のような、不可思議さとシリアスさ、ユーモアと醒めた目線、「喜怒哀楽」の全てが詰まった傑作だった。この奇妙な物語が、最終的にどこに落ち着くのか。ありきたりなストーリーテリングから遠く離れたところにある、その着地点を確かめるため、映画館に走ったとしても決して損はしないと思いますよ。

    mcatm2018-02-06 02:54

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  • 南瓜とマヨネーズ

    2018-02-02 00:37

    大昔、稲田堤に住んでいた頃、間違って終電間際の京王線の車中で読んで泣いた。以来、漫画をあまり読まない俺にとって困ったことに思い出深い一冊となってしまった、魚喃キリコ『南瓜とマヨネーズ』。(俺は岡崎京子『リバーズ・エッジ』でも同様の号泣事件やってて、どっちが京王線の車中だったか忘れてしまった。まあいいんですよ)

    eBooks南瓜とマヨネーズ (FEEL COMICS)祥伝社

    映像化するのは冨永昌敬監督。あの『亀虫』の人ですよ!というところから若干アップデートされていない情報を片手に映画館。何で泣いたのかも忘れてしまうぐらい遠い昔のことで、この映像化が原作に忠実なのかもちょっと曖昧なんだけど(確か、売春バレるシーン、原作ではもっと後ですよね)、相変わらずベロベロ泣けたし、相変わらず何で泣けたのかよくわからない、っていうのが特徴的なのかも。目の前で行われてるのは、セコくて、超小さい話なのに、何か大仏の手に鷲掴みにされているような、自分がコントロールできない感覚に襲われる作劇なのだ。

    おそらく、目には見えないような小さな積み重ねがあったのだと思う。いくつかの別れがあり、いくつかの挫折がそこにある。それに加えて、ごくごくささやかで、将来のこともよくわからない、でも確かな「再生」の光があって、そのカタルシスに心揺り動かされるのかもしれない。しかし、被支配者の弱みだね、これについてはちょっと降参だ。

    登場人物は、みなちょっとずつ嫌な奴で、みなちょっとずつ良い奴。なんでもない景色や、必要以上の「平凡」を提示することで無理矢理勝ち取った「普通」ではなくて、「幸せ」と「不幸せ」の間でグラグラとバランス取りながら、不安定な「普通」を見せるやり方、ちょっと乱暴だが面白いアプローチだと思う。リニアなのではなく、全て力関係のバランスの中で成立する「普通」。

    「親の七光」から最も遠いところにいる二世役者(というか、俺は中野英雄を軽視しすぎなのかもしれない)=大賀の実力や、何らかの天罰が下り、どうしようもなくハゲ散らかしてくれたら溜飲も下がるだろうにと感じざるを得ないハギオを演じるオダギリジョーの説得力。そして、何と言っても、臼田あさ美。実在感は役者がみんな保証してくれるこの安心感。

    特に印象深かったのは立ち飲み屋での別れのシーン。「自ら別れを切り出す」ことでマウントを取ろうとするツチダに対して、「俺はいいよ」と取り付く島もない。執着もないので、その地獄の時間をつまらなそうに切り上げるための「ビール、キャンセルで」。のらりくらりとペースを掴み始めたタイミングで再注文されるビール。ビール瓶の往復が、激しい心理的駆け引きを暗示している。キリキリするような緊張感が、臼田あさ美とオダギリジョーの一見力の抜けた演技の中からにじみ出てくる。

    不毛な取引。その果てに再生される、ある「精神」。本当に取るに足らない小さなクリエイティビティが、二人きりの空間で立ち上がる時、今まで対等ではなかった関係性の美しい着地点が見え、これからどうなるか将来の保証はないまま、ただそっとランディングする打ち上げ帰りの明け方。アスファルトはちょっとヒヤッとしているみたいで、俺はこんな光景を過去に何度も見ているのだった。

    せいいちが、最初に棚を作った時の可愛い笑顔と、最後に曲を聞かせた時の可愛い笑顔が、同じ種類の笑顔だった。

    mcatm2018-02-02 00:37

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  • Peter Tscherkassky(ペーター・チャーカスキー)っていう人のことを初めて知ったんですが、オーストリアの前衛映像作家で、主にFound Footageをアナログな手法で編集する作風で知られているとのこと。オフィシャルサイトの説明を読むに、この『Dream Work』はまさにそうしたFound Footageを用いて、明滅する悪夢的なヴィジョンを提示している。

    音楽も素晴らしくて、クレジットによるとKiawasch Saheb Nassaghという人が制作しているとのことだったが、そもそも僕が知ったのはOpera Mortというユニットがこの『Dreamwork』の上映をしながらライブ演奏した作品を聴いてのこと。この辺の地下シーンがどんなつながりを持っているのか、不勉強にしてよく知らないので追っていきたいなー。

    mcatm2018-01-30 02:20

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  • デトロイト

    2018-01-29 02:26

    「白人が悪い」とか「黒人は可哀想」みたいな反レイシズムを装ったセンセーショナリズムから千歩以上の距離を取り、堕落した人間も堕落した行為も、それを可能とするコンテクストは確かに存在するのだ、と明言する姿勢。60年代にデトロイトで起こった暴動の中で起こった「アルジェ・モーテル事件」を題材にしたキャサリン・ビグロー監督作『デトロイト』ではそんな姿勢が貫かれている。

    不満を抱えた黒人達が暴徒と化すデトロイト。アルジェ・モーテルで起こったおもちゃの銃の発砲騒ぎに端を発する、殺人を伴った暴力的な尋問が物語の核。白人の無能な警官たちが暴走し続ける様を執拗に描いている。2〜3秒で細かくリズミカルにカットを割っていく編集で、セリフや音はカットをまたがって持続していたりするので、ストーリーは淡々と進行しながら画的な緊張感が持続する。手ブレの多い撮影スタイルも、その緊迫感を煽る。

    群像劇なのでスポットの当たる登場人物は多く、フィン役でおなじみのボイエガをはじめ、『God Help The Girl』のハンナ・マリーや、ファルコン=アンソニー・マッキー、白人警官役に『シングストリート』のお兄ちゃん役ジャック・レイナーなど、結構豪華なキャスト。そんな中、全く知らない俳優だったが、多くの観客を不快にさせ、その無能さを全世界にアピールしたであろう白人警官フィリップ役ウィル・ポールターの演技と顔(というか、特徴的な額)には大いに惹きつけられた。その誰もが全くハッピーにならない。(ボイエガのエピソードは、その後も含めてもう少し掘り下げて欲しかったと言うのは本音)

    果てしなく胸糞の悪い話だが、地獄という名の現実は「いやーーー気分悪かったけど、まあ、これにて一件落着…?」と油断する俺たちを更に痛めつける。そこにあるのは、差別、無理解、拒絶。その果てに現れる今日にも通ずる理不尽な光景こそが、センセーショナリズムでは描くことの出来ない「寂寞」なのだろうと思う。

    終盤、エンドロール手前では、この手のよく出来た実話もの定番の、「あ、これ…実話だった…んだよな…」というズッシリとした実感を味わえる。ザ・ドラマティックス、実在するのね…とか。結局、その「実在した」人達が、俺たちと同じように少しずつ間違え、少しずつ正しさに縛られたりした結果として、この理不尽な世界はある。

    mcatm2018-01-29 02:26

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  • わたしたちの家

    2018-01-25 01:24

    「観客それぞれの心の中に正解はある」というような作品受容の形って、随分と定着してきたと思うんだけど、実際それを観客に納得させるには技術とかセンスが必要だし、往々にしてその試みは失敗していると思う。「それぞれの正解」問題って、手法だけがフォーカスされて、「メソッドとしてあり」みたいな単一解になるのはすごく勿体無い。(ヨルゴス・ランティモス『籠の中の乙女』はそれで失敗しているような作品だったと個人的には思っているが、彼はその後『ロブスター』という傑作をものした)
    清原惟監督作『わたしたちの家』には、まだまだ脆弱な形をしているものの、その類の説得力が確かに存在していると感じた。

    2017年のPFFでグランプリを受賞した本作『わたしたちの家』は、「わたしの家」の集積である「わたしたちの家」を礎に、複数(2つ)の物語〜時間軸が同時に、完全に交わることはないまま進行していくという非常に変わった作りの映画(記憶のレイヤーを巡る話である『わたしはゴースト』とかはちょっと近いかも)。
    一軒の非常に変わった作りの古い家が主な舞台になっており、カメラが切り取るその室内風景はどれも美しく、ある種の完成されたミニマルさを持っている(アフタートークでヴィヴィアン佐藤さん曰く、重要な舞台である「茶の間」はたった2つの構図でしか登場していなかった)。その醒めた視点が唐突に動き出す時、例えば登場人物の二人が不意に思い出した歌を口ずさみながら室内を駆け回ったり、屋外の路をどこ知れず進む曲がり角などで、物語は唐突にダイナミズムを孕み、まるで動き始めているかのように感じるが、実際は時間も空間も前後不覚のままなのだ。

    ジャンル映画ではないんだけど、そのメソッドが援用されていて、そこで演出される恐怖はグレイス・ペイリーやシャーリイ・ジャクスンのような、「平易な一見何事も起こっていないかのように見える状況の、なんとも言えない恐ろしさ」に通底するところがある。実験的でありながら、「この奇妙な事象をどのように捉えるのが正解なのか」という問いかけに力点があるわけではなく、割と劇映画的でオーソドックスな物語展開に推進力を持たせているように思えるところが印象的で、故に「正解など要らない」という説得力をギリギリのところで担保しているように思える。

    Bookくじ (ハヤカワ・ミステリ文庫)早川書房

    ヨルゴス・ランティモスのように、次回作で更に飛躍するんじゃないかと思わせる新人作家の登場を感じました。我々の生きる「日常」に対するちょっとした疑義を控えめに掲出する、実に挑発的な映画。どこにも着地することのない、永遠に形を変え続けるメタファーの作家だと思っています。

    mcatm2018-01-25 01:24

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  • 皆殺しの天使

    2018-01-09 01:47

    ルイス・ブニュエルのメキシコ時代の代表作を、渋谷イメージフォーラムで。

    ルイス・ブニュエル監督『皆殺しの天使』同時公開『ビリディアナ』『砂漠のシモン』|公式サイト不可解の極みに誘う、壮麗かつ危険な映画。瀆神的で寓話的、放たれた悪意とユーモアが現実をあぶり出し、変質させる。『皆殺しの天使』同時公開『ビリディアナ』『砂漠のシ…

    パーティーに招かれた20人ぐらいの客が部屋から出られなくなる、というそれだけの話。何らかの物理的な障害があるわけでもなんでもなく、「なんかわからないけど」とにかく何日も部屋から出られない。食料もなく、水も飲めないまま、極限状態に陥っていく…。

    世にも不条理な作品。不条理が過ぎて、「一体何のために撮ったのかわからない」作品になっているけど、これって結構凄いことなんじゃないだろうか…。この文法は、どこにも引き継がれていない気がして、観ながら不安になってくるぐらいの奇妙さ。特に、同じ場面を意味もなく反復する件があって、その得体のしれ無さに震えた(アフタートークでKERAさん曰く、ブニュエル自身がインタビューで「尺を埋めるため」という身も蓋もない言い方をしていたとのこと)。

    一つ一つの描写は随分と微に入り細に入り思わせぶりな演出をしてるんだが、そのどれも投げっぱなしで、最終的に何も説明しない。伏線貼りまくって片っ端から回収しないシステムって、客側からするとストレスに感じるんじゃないかと思うんだけど、伏線の量があまりに大量なので貼ってる行為自体が面白くなる。
    特に印象的だったのは、スプーンを取りに行くよう命令された執事が、部屋の外に出る直前でどーーーーーしても他のことが気になってしまい、「なんかわからないけど」外に出れないという描写(このシーンがなかったら映画として成立しなかったかもしれないから、意に反して「必要なシーン」だったのかもしれないが)。こんなのが延々続き、当人たちは相当シリアスなのに、観てるこちらからすると相当マヌケな状態になっているという、最終的には立派なコメディと化していました。今までの時間を無にする、突き放すようなラストも最高すぎた。

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    mcatm2018-01-09 01:47

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  • 前作『キングスマン』、大傑作でしたねー。多くの人が震えたであろう、コリン・ファース大暴れの「教会シーン」、ラストの「美しい核爆発」、本当に大好きで、続編も封切り日に観に行きました。退屈はしなかった。退屈は。

    身も蓋も無いことを勝手に全人類代表して言ってしまうんだけど、俺たち、コリン・ファースが好きなのであって、タロン・エガートンについては未だ評価保留中ですよ。いささか分が悪いのは承知の上なんだけど、やっぱコリン・ファースの圧倒的な色気、仕立ての良いスリムなスーツの似合いっぷり、エガートン、まだまだ全然足りてない。単純なルックという意味での寂しさは否めなかったっすね。

    あと、前回出てきて、醜悪な「ご褒美」をドロップの末、作品の品位に著しい傷をつけた、あの例の「姫」。今回はストーリーの核で、彼女への愛情が主人公の行動動機として機能するんだけど、正直全然感情移入出来ない…。『スパイダーマン』のMJ=キルスティン・ダンスト的なルックスの違和感を置いておいたとしても、やることなすこといちいち癪に障るというか…。前半はまだ可愛げがあって良いものの、後半、例の罠に自業自得でハマり、挙句あの面で文字通り「固まる」という地獄の展開には悪い意味でちょっと悶絶した。

    良いところもあった。ジュリアン・ムーアの醜悪なヴィランっぷり!エルトン・ジョンの出てるシーンもすべて良かった(ただし、アクションシーンで主人公二人を食っちゃってたのは本当にありえないと思う)。序盤のカーチェイスで見せる、長いドリフトも最高でした。全体的に、前作以上に「マンガ」的な世界観を強調していたのも、カネを払うに値する強烈なバカバカしさがあった。

    しかしながら、俺たちのチャニング・テイタムが本当にチョイ役で終わってしまったり、片目になり復活を遂げた直後、照準も合わせられないほど肉体が衰えていたコリン・ファースが、終盤どうして復調したのかの説明も一切なし。全体的に脚本の粗が、アクションの気持ちよさを邪魔してたなー。

    でじゃあ、アクションはどうだったかというと、結果的に前回の「教会」越えを果たすことなく、不完全燃焼に終わってしまいました。残念。これ、全然良いところねえな…。でも、第三弾も観に行っちゃうんですよ、俺、馬鹿だから

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    mcatm2018-01-07 02:41

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  • いいなー観たいなー。13時間耐えられるかな…。

    ジャック・リヴェットが監督した4作目の長編『アウト・ワン 我に触れるな』は、映画ファンにとって、長らく名前のみ有名であるものの殆ど誰も見ることの出来ない幻の傑作として知られてきた。 あまりにも長大な、13時間近い上映時間。

    IndieTokyo『アウト・ワン』2018年2月東京上映詳細『アウト・ワン 我に触れるな』2月東京上映 ジャック・リヴェットが監督した4作目の長編『アウト・ワン 我に触れるな』は、映画ファンにとって、長らく名前のみ有名で…

    mcatm2017-12-27 02:07

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  • エドガー・ライトが大好きなホラー映画百選!

    MUBIEdgar Wright’s 100 Favourite Horror Movies - Movie ListFrom Edgar Wright: “Here, for Halloween, is a chronological list of my favorite …

    mcatm2017-11-02 00:28

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  • 『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』。大好きだけど、映画としての完成度を手放しで認めちゃうほどは狂えなかった前作(特にラスボス、手を繋いで「わーーーー」って言ってたら倒せちゃう系には点が辛くなる)。とは言え、続編で大好きなあいつら、スターロードことピーター・クイル、ガモーラ、ドラックス、ロケット、そして「I am groot」でおなじみグルートや、ヨンドゥに再び会える機会がやってきたと聞いて、会いたくないと言ったら嘘になる。ということで、TOHOシネマズ渋谷へ。

    …終演後、拍手起きてたよ。俺も涙を拭きながら手叩いてた。最高最高、最っっっ高!!!!!

    SFアクション・コメディの大傑作

    マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)15作目として公開された本作『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー vol.2』(日本公開題では絶対に呼びたくない派に属しています、俺も)。まず、MCU作品の最大の欠点である「一見さんお断り」の敷居の高さは全く気にしないでOK。続編なのでさすがに一作目を観ておいたほうが上がるけど、最悪それすら観なくても鑑賞には特に問題なし。MCU前作『ドクター・ストレンジ』(これもド傑作)同様、各ヒーロー単体作では、一見さんに配慮することで、更にファン層拡大を狙ってるんでしょうね(で、アヴェンジャーズとかシビルウォーは、ファンサービス作品として割り切っちゃう)。全く恐ろしい組織ですね、マーベルシネマ…。

    本作はSFとしての出来も相当良く、「イマジネーション溢れるSFアクション・コメディの大傑作」としても、十分オススメできる内容になっています。更に言うと、単に独善的で突拍子もない「発想」を振り回すだけの映画ではなく、過去のSFのビジュアル資産、歴史の上に成立しているのが本当によく分かる美術の数々が、それだけで鑑賞欲を満たしてくれます。特に気に入っているのは、金色の肌をしたソヴリン人が、大型の部屋に敷き詰められたゲーセンの巨大筐体のようなコンソールで、スペースシップを遠隔操作してガーディアンズ達を攻めるシーン。ここは『2001年宇宙の旅』を思わせる少し球状に歪んだレンズを用いたような視覚効果で、艦隊の大きさをヴィジュアルで印象づけるような良い場面。例えば、エゴというキャラクターの乗る白とピンクが配色された丸い宇宙船なんかは、『ホドロフスキーのDUNE』で、ギーガーやメビウスがぶち上げたようなとんでもないイマジネーションに通じるものを感じてゾクッと来たし、フリッツ・ラングやアレクセイ・ゲルマン『神様はつらい』のようなディストピアのイメージすら、ソブリン人の青絨毯での行進シーンなどで挟み込んでくる。それも爆笑込みで。そう、この映画、コメディなのよね

    会場は(外国人が比較的多めだったとは言え)終始爆笑の連続で、特筆すべきは、緊迫感の高まるスリリングなシーンでも、哀しいシーンでも、問答無用でギャグをぶち込んでくるところ。予告編でも流れている起爆装置を前にした「I am Groot?」のシーンや、デヴィッド・ハッセルホフのあのシーンも、本編通して最大級に緊張の高まってくるところでのあれですからね。泣きと笑いとスリルのミルフィーユを問答無用で食わせる。そんなミルフィーユ大好物じゃないですか。そんな映画です。

    前作で割と丁寧に出会いを描いたキャラクター達も、本作ではもう前置き不要だから、オープニングから飛ばしまくってる。冒頭の大戦闘シーンをバックに、前作で訳あって「小枝」と化してしまったベビー・グルートがスターロードの最強ミックスをバックにダンス。もうその時点で入場料にお釣りが発生しちゃってるわけ。チーム全体のベースに流れるチームワークの良さ、ファミリー感がこのシーンでガッツリ説明されちゃっている。

    まさかの「ガハハ」キャラで、完全にチームに溶け込んじゃってるドラックスは、後半何やってても面白い状態に。キリッとした顔してても面白いって、コメディリリーフとして完璧な仕事じゃないですかね。ガモーラ萌え。ピーター・クイル、というかクリス・プラットの俳優としての格が上がってるのも嬉しい誤算だったし、もうとにかくかわいいベビー・グルートはもうとにかくかわいい。で驚くのは、かわいさもちいささも、全部物語に活かされている点。そう、この映画、至る所に伏線が貼ってあって、それを見事に回収していくのも気持ちいい。脚本最高。ここに来て俺、確信した。ジェームズ・ガン。天才だと思う

    …で、そろそろ、いっすかね?以下、ネタバレ全開で挑みます(ネタバレがあっても大丈夫な映画はあるし、この作品はネタバレしていたとしても作品の価値が著しく落ちるようなタイプの映画ではないんですが、それでもまずは映画館に足を運んで欲しいですね。ビックリするのも価値の一部だから…)。

    父と子の関係を描き、前作からの伏線を消化

    さて、本作のテーマって何でしょう。ズバリ「親子(特に父と子)」ですよね。これは観た人誰もが分かると思う。

    途中まで観た時点で、「この映画って最高だけど、あれ、ヴィラン(悪役)はどこに出てくるんだ…?」って不安に思ってたんです。幼いころに母を悪性の腫瘍で亡くし、父を探して宇宙を放浪していたピーター。その前に現れる父(カート・ラッセル)は、その親子でしか出来ない絆としての「光の玉」を使ってキャッチボールをしてくれる本当の父。そんな父親が、ヴィランとして彼らの前に立ちはだかる展開、そしてその事実を伝えるために周囲の仲間たちが集まってくる展開のタイトさ。

    そうした中、中途より特にクローズアップされる、義理の父としてのヨンドゥの存在。彼が、この物語のテーマ性に、二重三重の意味をもたらしたと言っても過言ではない。「神の子」であったピーターが、その事実を喜びとして受け入れる事実。そして、ピーターが肌の色も違う誘拐犯であるヨンドゥに、終始脅され、強制的に悪事を覚えさせられていたという悲しい事実。その二つの事実が、ピーターに間違った判断をさせる足枷として働く。そんな力学が物語を推進させているわけです。

    そこに、仲間たちの手によってもたらされた情報がピーターの判断を正しい方向に導くが、同時にそのタイミングでヨンドゥとピーターの本当の関係がズルズルズルっと白日のものになってくる。この瞬間に本当の白眉、カタルシスがあったと言えるのではないかと。「何故ヨンドゥはピーターに甘いのか(本当はどういう感情を持っているのか)」という前作からの伏線も含めて、ピーターとヨンドゥが本当の父子になるところで、この映画はクライマックスを迎え、僕らは鼻をすする、っていうか、もうこの瞬間の記憶が無いわ

    そしてロケット。引き続き、彼は過剰な憎まれ口を叩く、どっちかと言うとボーダー振り切れてしまっているタイプの厄介な「友達」っていう印象のままこの映画に登場するんですが、その彼が初めて真摯な表情を見せる時、つまりヨンドゥの「父としての決断」を「似た者同士」として受け入れる時、彼のチームに対する感情、特にグルートに対する感情が露わになり、「We are groot」…。もう涙腺がバカになるわけです。この「CGで出来たアライグマ」っていう、映像表現におけるハンデキャップを背負ったキャラクターの「真摯な表情」を観るためだけにでも、映画館行く価値アリですよ。マジで。

    …ということで

    もう後半は殴り書きみたいになってしまいましたが、映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー vol.2』(日本公開題だけじゃなくて、本作の日本における宣伝は、正直酷いと想いますよ。あのポスター観て、行きたいと思う一見さんが多いとは思えない…)。序盤に書いたこと思い出して欲しい。これMCUの新作っていうよりも、「SFアクション・コメディの大傑作」として捉えていいものだと思います、マジで。エンドロール始まってからのおみやげも異常に多いし、原作ファン垂涎ものの展開も大量にしかけてあるし(俺は元々原作ファンじゃないから映画観てる時点ではポカーンでしたが、後で調べて高まるものがあった)、勿論今回も最強Mixは最強だし、そもそも物語に深く影響を与える重要な要素になっています。退屈なシーンが一秒もなかったので、「SFアクション・コメディ」にピンと来た方には全力でオススメします!!

    DVDガーディアンズ・オブ・ギャラクシー MovieNEX(期間限定) [ブルーレイ+DVD+デジタルコピー(クラウド対応)+MovieNEXワールド] [Blu-ray]ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社

    一作目。俺は冒頭のシークエンスが一番好きだ。

    Musicガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス オーサム・ミックス・VOL.2(オリジナル・サウンドトラック)ユニバーサル ミュージック

    サントラ。Apple Musicには存在せず、代わりに1作目と2作目合わせた公式プレイリストが存在してる。

    Bookガーディアンズ・オブ・ギャラクシー/コンプリート・ヒストリー洋泉社

    今一番欲しい本。

    mcatm2017-05-22 00:30

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  • ナイスガイズ!

    2017-04-29 02:54

    観る前からタマフルでの宇多丸さんの批評が楽しすぎて何十回も聞いてしまったほど、この『ナイスガイズ!』、一言で言うなら「サイコー!(裏声で)」としか。

    シェーン・ブラック(俺にとっては『リーサル・ウェポン』のシェーン・ブラック)が監督を務めた、ラッセル・クロウ(ぎょっとするぐらい太った)と、今をときめくライアン・ゴズリングによる70年代風バディ・ムービー。個人的に、一番近いのは『ブルームーン探偵社』だと思った。つまりライアン・ゴズリングは現代のブルース・ウィリス。ヒロイン(?)アメリアの剣幕に死ぬほどビビってたり、「あ、デキる奴なんじゃーん」と思わせて、やっぱり全然駄目だったり、ずっとライアン・ゴズリングの事ばっかり考えちゃって、これが『ラ・ラ・ランド』と同時期公開だなんて、因果な国だな、日本、って思った。「ジーザス!(裏声で)」には声出して笑った。

    俺も直ちに続編希望。

    DVDナイスガイズ! [Blu-ray]松竹

    mcatm2017-04-29 02:54

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  • ムーンライト

    2017-04-20 00:42

    「あの『ラ・ラ・ランド』を押さえて作品賞を受賞するなんて、どんな映画なんだ」って思えたなら良いほう。どっちかというと前評判として聞こえてくる「地味だけどいい映画」的な評価とか、そもそも「政治的な理由で穫れた作品賞」なんて流言(…とは言い切れないのかもしれないけどさ)もあって、絶妙に観る気が萎える環境に置かれてる『ムーンライト』。「黒人」の「同性愛」を扱った映画であれば、黄色人種のヘテロセクシャルにとって、別世界の話として遠ざけてもおかしくない。深夜のTOHOシネマズ新宿で観ましたが、これ、直球で素晴らしい。直球で素晴らしい、ということをあえて世界に喧伝したい。『ラ・ラ・ランド』を破るのも納得の傑作で。

    映像の美しさは特筆に値する。ウォン・カーウァイ〜クリストファー・ドイルの影響が語られているが、それも納得のアブストラクトな表現が頻発。陽光に煌めく波の表現や、黒い肌を彫刻のように魅力的に見せる青の光線が眩しい(実際の技術的な解説については、町山さんのラジオ書き起こしを参照のこと)。その効果もあって、ナオミ・ハリス演じる母親も若い頃は精力的に見える(が故に主人公にとってのトラウマとなるのだが)。しかし、荒れに荒れたまま年老いていく生活の反映として、増えたシワや肌の衰えが、光線を上手く反射しなくなる演出がにくい。その一方で、母のような慈悲を注いでくれるテレサは、死期にある象のように年老いた姿を見せることはない。

    ホモセクシャルを理由にイジメられる主人公シャロン。その心の壁を破壊するような造作で、唐突に彼の人生に登場するドラッグディーラーのフアン。彼に教えられた「自分の道は自分で選べ」という言葉を実践できぬまま、不器用に歳を重ねてしまうシャロンが、自分の道を一歩踏み出すまでの物語(この構造って、男女反転版『キャロル』を感じたりもした)。メンターであるフアンの姿形をなぞるように、一見、別人のようになってしまったシャロンが、久しぶりに再開する旧友の前ではやはり口数少なかったり、強面なのに酒は飲めなかったりするところに、「三つ子の魂」を感じてしまい、愛おしさを覚える。ジュークボックスの曲があれだけ雄弁だった例を、俺は他に知らない。

    DVDキャロル [DVD]KADOKAWA / 角川書店

    ラストシーンで交わされる「とある抱擁」は、彼の未来を明るく見せるようでいて、着衣の様に少しの距離感を感じたりして、安易に着地させない、心地よいモヤモヤを残すところが素晴らしい。三人の主演俳優が、一見全然似てないのに、醒めた目だけが共通しているのが印象的だった。

    DVDムーンライト スタンダード・エディション [Blu-ray]TCエンタテインメント

    mcatm2017-04-20 00:42

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  • イノセント15

    2017-04-10 00:10

    イノセントな二人が、アクションで時間を切り裂く

    忘れもしない土砂降りの中、テアトル新宿。前々から観ようと思っていた『イノセント15』を観た。

    「瑞々しい」という言葉で誤魔化さない、ささくれだった切り口が見えるような器用とは言えない世界。その継ぎ目に、その継ぎ方に、作り手の見せたい世界の在り様が見えてくる。特に「モンタージュ芸術」であるところの「映画」においては、その傾向が顕著だと思う。

    オープニング、なんだかぶっきらぼうに背景音が掻き消され「おや?」と思っていた不安は、積み重ねられるモンタージュの層の中で、心地よい傷跡として機能していった。この映画の「時間」と「編集」についてのセンスは信用して良いと思う。俳優の演技や、音楽など、映画にとって重要な要素は沢山あるが、「編集」そして「時間の取り扱い方」についての誠実さって、俺は最も重要だと思っているのだ。

    「少年」と「青年」、「少女」と「女性」の狭間で、地方都市の現実のどうしようもないビターさに打ちのめされる男女の姿を描いたのが『イノセント15』。そうしたビターさを前に、「少年」と「少女」がアクションを以って時間を切り裂き、物語が前進する。(その「ビターさ」のカリカチュアがあまりに過剰で突拍子もなさすぎて鼻白む、という意見もあったが、確かに娘を簀巻にする母親って漫画だろ…と思うようなこともありつつ、しかしそこをこの物語のリアリティラインとして設定する覚悟として、後の展開も含めて筋の通ったものを感じる)

    特に、「少年」がある人物を殴りつけるシーン。「あっ!」と息を呑む間もなく、台所に立つ「少女」の軽やかなステップ。「ゴン!」と鈍い音が、「ストン」と着地する気持ち良さ。自由で無責任な人間が、見えない鎖を振りほどくように無軌道に動作するその瞬間と、自由を認められていない人間が、その束縛の中で凛とした自由を踏みしめるシーンが連動する。行動が時間を切り裂き、物語として着地するその瞬間、映画の歓びを感じる。

    そうした美しい時間が幾度となく現れる。こういうの観に行ってるんですよね、俺。例えば、「少年」の父が、旧友を迎え入れるシーン。雪の降る寒々しい風景をバックに、単に車を降りて旅館に入るだけのシークエンスで、車の扉が閉まる音と、旅館の扉が立てる騒音がスリリングに交錯する。何でもないシーンを、如何に丁寧に、どのように取り扱うか。その選択一つで後に辿ることになる運命を暗示することが出来るということを、作り手が確信しているのである。

    「人力で作り上げた奇跡」のような瞬間

    状況や感情を切り裂くような鮮烈なエディット感覚は、もやっと弛緩した白昼夢のようなシーンでもまた、逆説的に効果を発揮する。映画の中盤で訪れる、「少年」と「少女」が二人で紡ぎあげた物語の一つの極みのような時間、暗い教会(ではなく、終業後の結婚式場)での長回しは、画素の粗さも相まって、人力で作り上げた奇跡のような瞬間に満ちている(何回撮ったんだろう…)。長回しで雰囲気のあるシーンながら、いささか衝撃的なストーリーの決定的な転機も仕込まれており、打算と奇跡が混濁しているこの構図は、「聖なる建物のイミテーション」である結婚式場というロケーションも相まって、聖と邪の混濁とピッタリと重なり合う構図である。このシーンは、韓国映画の大傑作の一つである『息もできない』の、あの川岸のシーンに匹敵する凄みを持った、心から美しいシーンだと思う。(異なる映画ですよ、勿論。鬼気迫る感じとか及んでないところも多々あるけど、系譜は一緒だと思う、俺は)

    実は、この映画を撮った甲斐監督って俺の大学の同期でもあるので、観る前は(元々、同期が撮った映画とは知らずに、フライヤーを見て、観たいと思っていたので)期待もありつつ、同時に凄まじい不安を感じていた(「もし出来が芳しくなかったとして、そっと挨拶せずに帰る手段はあるのだろうか…」)。これが傑作だった。助かった…。

    でも、嫉妬も感じたな。きちんと俎上に立ち続ける大切さも、改めて感じました。『息もできない』のヤン・イクチュンは、その後、きちんとした映画は撮れてない(俳優としては活躍中)けど、甲斐くんには映画撮り続けて欲しいなと思う。続けていれば、何年か後には、もっと凄い注目作を監督してくれてると信じてる。誇らしかったっすよ、マジで。

    DVDイノセント15 [Blu-ray]TCエンタテインメント

    mcatm2017-04-10 00:101

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  • バンコクナイツ

    2017-04-04 01:44

    とにかく川瀬陽太演じる「金城」の醜悪さは見どころだと思う。どう見ても最初は物腰の柔らかい、如何にも海千山千の「デキる管理職」的な中年である金城。この見逃してしまいがちな俗悪さは、日常のここそこに落ちているものだ。例えば小さな犯罪告白、弱いものが口を噤んでいればなかったものとなる悪事。金城という存在は、こういったものを笑顔でやりすごしていく姿の醜悪さの化身だ。

    大傑作『サウダーヂ』を送り出した空族久しぶりの新作長編に、心躍らない法はない。『サウダーヂ』から引き続き、「資本主義」というシステムに対する問題意識をメインテーマに、様々の「搾取の構図」を切り取りながら、バンコクからラオスへ続く風景を映し出したロードムービー。いかんせん、『サウダーヂ』がキャッチー過ぎるので、それを期待して観に行くと肩透かしを食うかもしれない。前作以上に何も説明しない、何も起こらない。3時間の上映時間、それでも眼はギンギンに冴え、次に「起こらない」出来事の空気を肺一杯に吸い込んでは様々な考えを巡らせる。空族の映画は、思考の触媒である

    バンコクの夜の街で生きる男女たち。「資本主義」の被膜の裏側に見えるこの街では、小金持ちの日本人観光客が「お客様」としてヒエラルキーのトップに位置するものとして扱われている。富田克也監督自身の演じる主人公のOZAWAは、不動産業者のリサーチ目的で到達するラオスにおいて、自然やそこに土着する精霊、真にカウンターたるもの(「焼け野原から反逆の狼煙」!!)との邂逅を経て、内なる倫理観を少しずつ変化させ、今まで当たり前のように周りにあった風景そのものを疑うようになる。もしくは、以前から内に存在した疑いそのものに目を向けるようになったのかもしれない。その混濁した意識が風景に溶け込む海岸のシーンや、田我流やstillichimiyaとラオスの爆撃跡地を訪れるシーンなど、ため息が出るほど美しいシーンは溢れている。

    空族は自作をDVD化しないことがモットーとのことなので、これは映画館でかかっているうちに観に行くのがマストである。『サウダーヂ』もこの機会に併せて観てみてください。

    mcatm2017-04-04 01:441

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  • ラ・ラ・ランド

    2017-03-21 02:41

    LAの高速道路を塗りつぶすカラフルな渋滞から物語は始まる。ゴダールの『ウィークエンド』を想起させる車の群れは、永遠に延びているように見える。「シネマスコープ」仕様のスクリーン、その向こう側まで。

    オープニングの素晴らしいミュージカルシークエンス「Another Day of Sun」は、そんな抑圧からの解放を「総天然色の夢」としてスクリーンの上に具現化してみせる。うだるように暑苦しい空間、じっとりと青く滲む空をレタリングするように「LA LA LAND」、Yasashii Std Regularフォントがスクリーンを支配する刹那、この映画の持つ空気感にグッと支配されたような感覚を覚えた。『ラ・ラ・ランド』。美しい映画が始まる。

    夢を日常が切り裂き、日常が夢を終わらせる

    しかし、アヴァンタイトルの終了と同時にシラっとした空気が流れ、喧騒に溢れた日常が一気に着地する。狂乱を演じた人々は、まるで集団熱病かなにかに冒されていたのだと言わんばかりに、車中、相も変らず停滞し続けている時間の中に舞い戻る。この切り返しのグルーヴ。夢から覚めたような虚脱した時間感覚。このいかにも「ミュージカル」的な、現実と夢を越境する時の、エスカレーターを降りた瞬間のような違和感。

    もしくは、LAを見下ろす丘のマジックアワー、端から「映画史に残る名シーンを撮影するぞ!」とスタッフ一同鼻息荒く撮影したに違いない、とんでもなくキュートで魅惑的なタップダンスのシーン。やがて二人の結びつきを示すことになるダンスと音楽が、うんざりするような日常音の象徴=iPhoneの着信音にせき止められる。多くの場合、「タイマー」としても使用されるこの着信音はやはり、現実と夢の境界線である。

    今にして思えば、「アカデミー賞14部門ノミネート!」といういささか景気の良すぎる話で2017年前半の注目をかっさらい、監督賞・主演女優賞(エマ・ストーン)含む6部門で受賞しながら、受賞作品を取り違えられるという「世紀のハプニング」を経て、結果的には『ムーンライト』に作品賞を持っていかれたという結果も、この現実と妄想の被膜に織り込まれたストーリーの一部だったようにすら思えるのだ。

    誰も主人公のことが見えていない。本人ですら

    映画館で何度も目にした予告編でもその都度落涙を禁じ得ないほど、本作の「音楽の力」は強力な武器である(俺の涙腺の緩さはさておいても)。その中でも特にパワフルな楽曲「Someone in the Crowd」に乗せて展開する、パーティーのシーン。「娯楽の暴力」とばかりに冒頭から飛ばしまくる本作のパワーが、見知らぬ世界を前にとまどいを見せ、一歩を踏み出せずにいる主人公ミア(エマ・ストーン)を、狂乱の渦に引きずり込まんと荒ぶるうちに、空気に滲むような極彩色が踊りだす。とにかく撮影が素晴らしい。しかし、フィルムに乗ったその美しい色彩が、二人の蜜月を映した夏のチャプターをピークに、徐々に失われていく。そこに取り残されているのは、「極彩色の夢」などではなく、「ビターな現実」である。

    ジャズへの情熱を語るその一方で音楽に対する姿勢は柔軟性を欠き、ピアノ弾きとしての職務すら全うできずにいるライアン・ゴズリング演ずる主人公のセブ。ホーギー・カーマイケルの座ったという椅子を後生大事に扱うところからも窺い知れる、古き「良き」ものに固執するセブ。
    方や、ミアは女優業を志してはいるが、ぼんやりとした憧れを抱いているだけで、ただただ闇雲にオーディションを受けては落ちる生活を送っている(杜撰なスケジュール管理をどうにかしろと思う)。ふたりとも互いに相手に欠けているものを認識しているが、己の社会に対する不誠実さや、己の本当にやるべきことが全く見えていないか、もしくは努めて見えていないふりをしている。そうした不誠実さがやがて二人を地獄に導き、そのありきたりな帰着として迎える決定的な破局を以って、「人って、自分のことが一番見えてないんだよね…」と一般化の後に、観客はもどかしさを感じてしまう。本作を通して噛みしめさせられるこうしたビターさの中にこそ、本作の最も優れた効能が含まれているのだ。

    例えばその効能は、「夢追い人」と歌われる二人の路がはっきりと分岐する瞬間、この選択は本当に不可避のものだったのか、と胸に去来した出所不明のもやもやした気分にもあらわれている。一般化してみると、我々もそんな現実を後付で「運命」と呼んでいるのではないかと気付く。そう、人間とは「不可避な現実」を、後付で「運命」と呼ぶ生き物なのだ。セブにとってのジャズも、古き「良き」ものではある(このセブの見立てもいささか狭量である)が、そうであるが故に「古臭いもの」として排除されゆく運命にある。その運命を受け入れるのか、それとも拒絶し抗うのか。

    倒錯した夢は、もう一つの現実

    本作において、多くの場合ミュージカルシークエンスとして描かれるのはもう一つの現実=「夢」でもあり、またその「夢」から登場人物たちは唐突に「現実」に墜落する(本作で最もドリーミーな瞬間は、雲の上で描かれるわけで、それを浮揚と墜落、離陸と着陸の暗喩で語り直すのは然程突拍子もないことではない…のではないか)。本作における最も大きなネタバレとなるであろう「ラスト数分間のミュージカルシークエンス」。ここで、観客は最も大きな浮揚と、最も大きな墜落を目撃する

    (ここから大ネタバレ)

    破局から数年後、ふたりは、ふたりなりの成功を収めている。セブは現実に折り合いをつけることで金銭的な成功を収め、ミアとの思い出に寄り添うかのように「セブス」と名付けた店を成功させ、ジャズをささやかに復権させた(ように見える)。『マルホランド・ドライブ』における売れない女優の妄想を想い起こさせるようなオーディションでの凄まじい演技を評価されたミア(この映画で何度かある、夢と現実の境界線が曖昧なシーンの一つだ)もまた、かつて羨んでいたような成功した女優として、家庭を持ち、幸せな生活を送っている(ように見える)。交わらなかったその二つの時間軸が奇跡的に交錯する瞬間、「もう一つの現実」が白昼幻想としてもう一度色鮮やかに具現化する。

    あるべきだったもう一つの現実では、出会いの瞬間からよりロマンティックに塗り替えられた二人の恋は永遠に続く。しかし、セブの理想は影を潜め、彼がミアに人生を捧げることで、お互いの境遇は少しずつバランスを変えていた。そういう意味では、これは単に「己の成功と引き換えに、ミアの成功と二人のロマンスが続くことを望んだ」セブの夢だったのかもしれない。一方で、かつて幾度となく通ったであろう「セブス」の建物のそばを通ったときに何も思い出さなかったミアの心には、一体何が去来していたのか。

    ふと夢から覚め、世界がその妄想に飽きてしまったかのような気だるさが戻ってくると、「夢」と「現実」の境界線におけるこの映画のルールはここで厳格に適用される。そう、現実が舞い降りてくるのだ。しかし、まさしく永遠の別れが訪れるその瞬間に、もう一度だけ二人は視線を絡ませる。その表情には、「もう一つの現実」を、単に「選択されなかった人生」として客観視する冷静な視線と、「選択された人生」を生きた互いの健闘を認め合う感情の両方が浮かんでいたように見えた。

    ロマンスは続かない。そんなありきたりなほろ苦さ、それこそが人生である。しかし、それに耐えきれなくなったら、つかの間、もう一つの現実をよすがとして生きていても良い。そんな弱さを肯定されたような気がした。本当に、美しい映画だった。

    MusicOst: La La LandInterscope Records

    DVDラ・ラ・ランド コレクターズ・エディション(2枚組) [Blu-ray]ポニーキャニオン

    mcatm2017-03-21 02:41

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  • グザヴィエ・ドランの長編第六作目。

    長い間、実家を捨てて暮らす成功した作家が、自らの死が近づいていることを知り、家族にその事を伝えに戻る物語。これまで以上に肝心なことは語られず、本質の手前で逡巡する登場人物たちの、抑えつつも深刻な感情のやり取りが、極々狭い空間の中で展開していく様が非常にスリリングな作品である。

    家族の皆が、自分たちを棄てた主人公のことを「非難していない」「これは批判じゃない」と強調すればするほど、この場における自らの居場所の無さ、「どこにも属していない自分」を意識させられるという構図。皆、お互いのことを知ろうとしたり、その気持ちに嘘をついて距離を置こうとする状況が、この映画の行間を読もうと集中する観客と重なり、息も詰まるような時間が淡々と流れていく。

    道化を演じ続ける母親が突然見せる、本質をえぐるような視線。しかし彼女は事実は何も知らない。

    何かを知ってしまったのは、マリオン・コティアール演じる、主人公の兄嫁。しかし、彼女は何も見抜けない。主人公は、この疎遠の家族に落ちた一滴の染みであり、そして多くの場合染みはいつか消される運命にある。

    結局、幾多もの逡巡を乗り越えて、できなかったのではない、「伝えないことを選択した」物語である。対比的に、「伝えること」の残酷さ、無神経さは、兄の口から無造作に伝えられるある人物の死に描かれている。その無神経さは、主人公を更に遠ざけていくのだ。

    また、果たしてこの物語には、「持つ者」の苦しみが記されている。おそらく、作家として名を成した主人公にとって、「持たざる者」たる家族の人々との再会は、話し言葉にせよ、振る舞い、知識にせよ、その断絶を強く思わせるものであった。今まで、徹底的に「叶わぬもの」の苦しみを描いてきたグザヴィエ・ドランにとって、何らかの意識変化、もしくは『Mommy』という傑作を成したその次の作劇として、些か挑戦的に作られた作品なのではないかとも思う。

    スリリングな感情のやり取りがメインで、派手なシーンも説明もあえて少ない作品。だが、マリオン・コティアール、レア・セドゥ、ヴァンサン・カッセルといった一流の俳優が一同に介し、濃密な感情のタペストリーを織り上げるその様は、『8月の家族たち』のドタバタともまたちょっと違った、「家族に異物が混入する」状況が描かれていて、十分に面白かったです。

    映画『たかが世界の終わり』公式サイト『Mommy/マミー』グザヴィエ・ドラン最新作!カンヌ国際映画祭グランプリ!描くのは「ある青年の最期の帰郷」その旅の先は──|映画『たかが世界の終わり』公式サイ…

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    mcatm2017-03-17 02:01

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  • 哭声/コクソンナ・ホンジン監督作

    2017-03-13 01:40

    シネマート新宿が人の群れですごいことになってた。まるで飛行機飛ばなかった時の空港みたい。これだけの数の人が、過剰な暴力描写で名高い名作『チェイサー』『哀しき獣』を撮ったナ・ホンジン監督最新作を観に集まっているというのは、捨てたもんじゃないなと思う。『哭声/コクソン』。期待通りの傑作でした。

    コクソンという名の村で、自分の家族を残虐に殺害するという謎の発狂事件が多発。その犯人は皆、肌に酷い湿疹が出ているという共通点があることに気付いた警察官が、ある日、自分の娘の身体に同じような湿疹があることに気付く…。

    その怪事件の原因と目されている日本人役を國村隼が怪演。褌一丁で鹿の死体にかぶりつく演技が独り歩きしているが、とにかくどっしりした声、不遜な眼差しに、「敵かな?味方かな?」メソッドが遺憾なく発揮され、「この悪そうな人、本当は良い人なのかもしれない」…など、数分毎に自分の直感がひっくり返される感覚が新鮮。「この映画は、オカルト風味のサスペンスである」「社会派を気取ったドタバタコメディである」などといった定義が出来るのだが、起承転承転承転承転承転承転承転承転承転承転承転転転転転…みたいなことを延々繰り返すため、自分が今、何を観ているのかよく分からなくなる。最終的に、自分の解釈や立ち位置次第で、この映画のテーマやジャンルがまるごとひっくり返るような、挑発的な構造になっており、僕自身、何が真実なのか未だに分からずにいます。(解釈についてはTwitterなどで様々な意見を目にしていて、どれも面白いです。一旦自分でとことん考えてみるのが吉)

    何度か観たくなるレベルで細かい伏線やミスリードが張り巡らされており、更にそれらを自ら蹂躙するようなことも平気でやる、文字通り型破りな怪作なので、ネタバレを不意に目にしてしまうリスクを避けるためにも、是非劇場で!

    • しかしながら、この世界観って、白石晃士監督がずーーーっと昔から取り組んでいるもの。なので、みんな白石作品観に行きまくって、予算潤沢な作品を撮ってもらいましょう。このレベルの撮ってくれるはず
    • 襲撃に際して武器をかき集めるシーンで、誰かが「骨」持ってきてたの最高だった。セルフオマージュ!

    mcatm2017-03-13 01:40

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  • お嬢さんパク・チャヌク最新作

    2017-03-04 04:33

    2017年、パク・チャヌク最新作『お嬢さん』。たまたま時間があったので…というか、金曜日恒例深夜の映画館にて、初日に観てきました。

    ナ・ホンジン『哭声/コクソン』や、Netflixでもポン・ジュノ新作が公開予定だったり、今年は、最近ちょっと(ちょっとね)元気のなかった韓国映画の注目作が次々に公開されるのだが、その先陣を切るのがパク・チャヌクによる本作。奇才の多い韓国映画界でもかなり特殊な作家性を持った監督で、特に傑作『渇き』以降、「何がどうなってこういう発想に行き着くんだろう…」と食べてるものが違うのかと不安になるほどオリジナルで、ミステリーとしての濃度も高い作品の作り手である。今回も英国のミステリー作家サラ・ウォーターズの『荊の城』(未読っす…)が原作ということもあり、特にそのミステリー要素が濃く現れている作品となっている。

    Book荊[いばら]の城 上 (創元推理文庫)東京創元社

    Book荊[いばら]の城 下 (創元推理文庫)東京創元社

    『イノセント・ガーデン』では初のハリウッド制作ということもあったのか控えめだったエロティックなモチーフもふんだんに散りばめられ、直接的な描写もかなりえげつないことになっているんですが、本作は物語だ、物語!「第一部」にあたる序盤は大きな山もないまま延々と状況説明が続くので、割と退屈に思えるのだが、体感一時間ほどで終了する第一部の終盤からラストまで、序盤のもやもやや伏線も片っ端から解消され、瞬きするのも忘れるほどの超展開を見せていく。(後から考えると、序盤の状況説明部分、ちょっとコナン・ドイル『ぶな屋敷』を思わせることも無くはない)

    なるべく情報は遮断して観に行ったほうが良い作品であることは間違いないので、あまり何も書かずに、ただ「観たぞ、お前も観ろよ」という意味も込めて公開することにします。ミステリー好きで、エロティックなモチーフに抵抗が無い方であれば、不慮のネタバレに出くわす前に、各自観に行ってくださいね!

    DVDイノセント・ガーデン [Blu-ray]20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン

    Movieオールド・ボーイ (字幕版)

    mcatm2017-03-04 04:33

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  • 期待の映画が続々と公開される2017年、不覚にも知らなかった。ダルデンヌ兄弟の新作が公開されることを…。実はダルデンヌ兄弟の作品を映画館で観たことがないので、今から楽しみです。絶対に観るからどんな映画か知らない。映画館でお会いしましょう!

    この予告も観てない!

    マイ・フェイヴァリット・ダルデンヌ作品は、『ある子供』かなあ…。

    DVDある子供 [DVD]KADOKAWA / 角川書店

    しかし、『ロゼッタ』も捨てがたいし…。どれも良い、のでこんどまとめてレビューしてみます。

    DVDロゼッタ [DVD]角川書店

    mcatm2017-02-24 01:091

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  • 観て欲しい。今からでも間に合う!『山田孝之の東京都北区赤羽』と同じノリで観ていたら完全に食らった。ものを作ったりしている人たちは特に、必見のやつだった。間違いない。

    特に注目してほしいのは、『水曜どうでしょう』で言えば大泉洋的な立ち位置で、山田孝之に振り回され続ける山下敦弘監督。「カンヌ獲りたい、プロデューサーとして」と無茶なことを言って暴走する山田孝之に、とにかく翻弄されて混乱しながら、でもいつの間にかなんとなく適応してカンヌ行って感極まって泣いちゃったりする、愛すべきキャラ。

    でも、山下監督って映画監督なわけです。それもただ単に「映画監督」ってだけじゃなく、現役バリバリでとても評価されているが、まだ大物とは言えない、中堅どころの才能ある監督なわけ。その人が「カンヌ穫れる映画を作りましょう」という幼稚な暴論をトリガーに暴走している山田孝之によって、作家としてのプライドとか、もっと言えば「倫理観」みたいものを、文字通り蹂躙されているはずなんです。それがもう、(申し訳ないけど)強烈に面白いし、そのぶつかり合いから生まれてくる議論っていうのがある。考えさせられる。

    どの回もクリフハンガーのようなフックがあって面白いんだけど、その一種独特な構造が現時点で一番露呈してしまっているのが、河瀨直美監督が登場する6〜7話。今まで大人たちが、遠慮して半笑いでスルーしてきた本当の話を、山田孝之にも、芦田愛菜にも、遠慮なく真正面からぶつける河瀬監督。「◯◯のために〜とかしか見えてこないけど、魂のために、とかそういうの無いの?」「『わーー』って叫んだら表現できるのと違うやん」「親を殺すんやで?」。山田孝之に「(カンヌ)取れる、私となら」って言ったときに走る緊張感。困る山田孝之、挑発する河瀨直美、蚊帳の外の山下敦弘という三人が、お互いをチラチラと確認しながら、しかしお互いに言わなければいけないことを言い終わったとき、山下監督の顔が映らなかったのは、やっぱりプライドなのかな、とか夫婦で話したりしていました。これからどうなっていくんだろ…??楽しみすぎる。

    DVD山田孝之のカンヌ映画祭 Blu-ray BOX東宝

    DVD山田孝之の東京都北区赤羽 Blu-ray BOX(初回限定:スペシャルナイト応募抽選券ハガキ封入)東宝

    mcatm2017-02-22 01:52

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  • ドクター・ストレンジマーベル・シネマティック・ユニバース第14作目

    2017-02-21 01:41

    最高のドラッグムービー!!超サイケデリック。予告観れば一目瞭然、純然たる3Dのための映画なので、絶対にIMAXでの鑑賞をオススメする。

    俺たちのカンバーバッチ先輩(『SHERLOCK』『イミテーション・ゲーム』で知られるが、俺的には『8月の家族たち』の怪演…)がマーベルに登場すると聞いた時点で、ワクワクとテカテカが止まらず顔がぬるんぬるんになっていた諸兄淑女の皆さんと俺。「マーベルの世界観にマッチするの…?」という状態から、報を重ねる毎に「意外と似てるじゃねえか(喜)!」「つか一体何なんだよ、この映像(喜)!」と、完全にマーベルの中の人達の思惑通りの思考にズブズブとハマっていったんですが、要するにまあ洗脳最高(時期的に不穏当)。

    とにかくこの映像体験、まずはそこに尽きる。監督のスコット・デリクソンは、『エミリーローズ』とか『デビルズ・ノット』を撮った人なんだけど、未体験の俺みたいな人間にも、他のも強烈に観てみたいと思わせるだけのパンチある映像。3D映え半端ないドラッギーな空間描写は予告編でも確認できるが、序盤、ティルダ・スウィントンとマッツ・ミケルセンが演じる大立ち回りは実はジャブ。中盤のアクション展開が本番で、『アヴェンジャーズ』の「一生続くかのようなアクションの洪水」を凌駕する酩酊を引き起こす凄まじい映像に、思わず「…ぅわあ…」って声が出た。リアルに。ホドロフスキーとか、意外とこういう映画撮りたかったんじゃないかなって思う(暴論)。『インセプション』って言われないように、『インセプション』的なアイディアを『インセプション』の数百倍てんこ盛りにしてるんだから、「数年遅れの『インセプション』エピゴーネン」で思考止めないでほしい。ネタバレになるから仔細は述べんが、最終的に決戦の地となる香港で、極上のワンアイディアを以って堂々と『インセプション』を越えるわけだから。そこは飲んで欲しい。

    DVDインセプション [Blu-ray]ワーナー・ホーム・ビデオ

    腕利きの医師であるドクター・ストレンジは、そのスキルと頭脳にアグラかきまくってかきまくってかきまくった結果、自動車事故で腕の神経をズタズタにやられる。そのハンデキャップを克服するために、ほぼ神頼み状態で赴いたカトマンズで魔術の存在を知り、魔術師としての一歩を踏み出す。新米魔術師がいつの間にか世界の危機に直面しているという巻き込まれ型の冒険映画で、ストーリーは相変わらず「ヤベえ敵がいて、それを倒す」ってだけの話なんだけど、「暴力とは、力とは」という裏命題、更に主人公の負った「傲慢の罪」にきちんとオトシマエつける展開はさすが。MCUはどうしてここまでしっかりとストーリーと思想に一本筋を通せるのか。ドルマムゥとの戦いとか、まさかのとんち。でも、あれで正解。暴力で終わらないというメッセージがあるのだ。

    とにかくIMAX映えする極上の映像体験なので、どうせ観るんだったら今のうちに映画館で。本作については過去のマーベルものの知識はほとんど必要ありません(『シビル・ウォー』とかは、過去作知らないと口開けて観てるしかないのとは対照的)。あとどうでもいいんだけど、レイチェル・マクアダムス、あんなに可愛かったっけ?ねえ。

    Bookドクター・ストレンジ:プレリュード (ShoPro Books)小学館集英社プロダクション

    mcatm2017-02-21 01:411

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  • スーパーボールのCMで流れた『ストレンジャーシングス シーズン2』のトレイラーがすごい。エルの好物ワッフルのCMに始まり、ゴーストバスターズのコスプレしてるあいつらが自転車乗り回すシーンや、悪夢的な巨大モンスター(俺の大好きな『ミスト』の生物みたい…)がうごめくシーンなど、期待が大きすぎて配信予定のハロウィンまでの記憶を亡くしそうな勢い(だがそれまでにも待ち遠しい映画や音源が多すぎるので俺は健やかに生きる)。

    Rolling Stone'Stranger Things': See Creepy Season Two TeaserKid crew dons 'Ghostbusters' outfits in clip promoting Netflix sci-fi/horror ser…

    マイク役のFinn Wolfhardは、スティーブン・キング『IT』の(二度目の)映画化にも出演するとのことで、2010年代のジュブナイルには欠かせない存在になってしまうのかな!みんなが売れてきていて、おじさんはうれしいですよ。

    BookIT〈1〉 (文春文庫)文藝春秋

    mcatm2017-02-08 02:24

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  • Miranda July Shares Her Vintage Feminist Film ArchiveFor a time, Joanie 4 Jackie, the artist’s project assembling low-budget video wo…

    ちょっとびっくりしたんですけど、Miranda JulyがRiot Grrrlにインスパイアされてコンパイルしたフェミニズム関係のフィルムやテープの膨大なアーカイブが公開されています。もちろん本人の作品ばかりではないんですが、とにかく貴重だし、これは腰を据えて観なきゃいかんやつだなと思いました。

    Joanie 4 JackieIn 1995 Miranda July dropped out of college, moved to Portland, Oregon, and type…

    が、今は線が細いっぽくて、満足に観れないので備忘録的に。NY Timesの記事に貼ってあるビデオのほうが観やすいかも。ドキュメンタリーが面白そうなので、頑張って観てみるかな。

    Bookいちばんここに似合う人 (新潮クレスト・ブックス)新潮社

    mcatm2017-02-02 02:31

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