宮藤官九郎『不適切にもほどがある!』の圧倒的な適切さ
この上なく「適切」であった『不適切にもほどがある!』最終話。このドラマが、「コンプラもないあの頃=昭和っていいですよね、戻りたいわ」というしょうもない結論になるはずはない、と信じて(祈って)きたんですが、やっぱり宮藤官九郎は裏切らなかった。見事な最終話でした。120点。
令和の価値観で昭和を断罪するのでもなく、その逆で昭和を称揚するのでもない、互いに「寛容であれ」という肯定精神。SNSの世にも、同調圧力の世にも、同じような「不寛容」が蔓延っていて、人々は生きづらさを抱えていることをあぶり出して見せる。色んな角度から、現実を照らしてみせる途方もない労力の注ぎ込まれた仕事だなあ、と脱帽しました。
「生と死」を扱うが故に、感情的にクライマックスとなりそうな部分は前半に集 中。特に、純子と渚の昭和での邂逅が、親子の構造を透かしてみせる形になっていて、グッと来てしまう。仲里依紗も相当に上手い(ドラマを通して、改めて見直した)のに、河合優実の抑えた演技がそれを食ってしまう瞬間が何度もあって、何を前景化すべきかがコロコロと切り替わっていくこの場面において、二人の役者の力量がそれを的確に表現するという凄いシークエンスだったと思います。
でも、全体を通して、SFコメディとしてのワクワクが全面に押し出されていたのが、意外だったし、楽しく観れた一番の要因だった気がします。色々な伏線が回収されつつ、いくつかの未解決な謎や、新たな謎も提示されたりして、「ということは?」と、俺はほぼ続編の制作を確信していますがどうか。ひとまず、超気の利いたエンドテロップ「2024年当時」のあまりの美しさに目眩を覚えつつ、30年後を楽しみに待ちますね。
MCATM
@mcatm
もっと読む
出社日。なんかすごく大人げないことをされて、軽く大人げない対応になってしまったので、落ち込む。オンラインだと悪意は簡単に伝播するので、気をつけなければ。年度末&送別会で、寿司とピザを食べる。「大人の男性はみんなサーモン寿司が好きだが、格好つけてコハダとか言う」という持論を開陳して...
2024-03-29 17:20過去の喧嘩対談ではいつもノリノリで潰しにかかる町山さんが、終始哀しそうな顔をしていて辛かった。マイクが割れるぐらいの音量で議論を潰し、些末なことで揚げ足を取り、自己矛盾、誤解、無知を曝け出しているのに、相手のミスは延々と粘着する幼稚な姿勢。うちの妻がミヒャエル・ハネケ『ファニーゲ...
2024-03-28 18:10我々は如何にして成熟から逃れ得るのだろうか。https://www.youtube.com/watch?v=NtkFei4wRjEベルイマン『第七の封印』を鑑賞する。パゾリーニ「生の三部作」も想起したのだが、この瑞々しい野蛮。対象的に、退廃していく文明社会。その対比が、美しく、醜...
2024-03-27 16:55久々に実装が追いつかずに、映画も観れない日。マジで久しぶり。短編だけでも観て寝ようかな…。『ゴールドボーイ』に感銘を受けたので、昼飯時に中華ドラマ版『バッド キッズ 隠秘之罪』を観始める。連続ドラマなので、当然より描写が細かくなるんだろうな、と思ってはいたんだけど、一話目で描かれる...
2024-03-26 16:18異常空間との報を受けて、トンツカタンお抹茶『かりんとうの新車発表会』を観ながら夕食。お抹茶がR-1 2024でかけた「かりんとうの車」使用曲が、利用規約違反で使えなくなるという注意深くやれば避けられた悲劇を経て、作曲者のマニーラさんが手掛けた新曲がちょっぱやで完成。納品された新車...
2024-03-25 16:36