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飯岡幸子監督『ヒノサト』/大川景子監督『oasis』

下高井戸シネマで開催されている特集上映「日々をつなぐ」で、飯岡幸子監督『ヒノサト』と、大川景子監督『oasis』を観る。どちらも説明のないドキュメンタリーという共通点がある。説明のないドキュメンタリーは、大部分で解釈が観客に委ねられるので、下手すると迷子になるが、ある種のパズル的な快感もあったりして面白い。


『ヒノサト』は、そういった意味でもかなり難しい一本で、20年ぐらい前の作品ということもあり「説明のないドキュメンタリー」というものの方法論が確立していない頃の雰囲気も色濃い(「ドキュメンタリー」というものの方法論も、この20年で随分多様になったと感じる)。飯岡監督のおじいさんが描いていた絵が地元の学校などいろいろな場所に飾られていて、彼の存在が地域に根ざしていることがうっすらと伝わるようになっている。そうした説明が一切ないので、解釈が難しい部分がある、というのがわかりやすい難点にも思えるが、単に一介の画家の物語としても成立しているので、頭を切り替えられれば問題ないはず。杉田協士監督作品などで撮影監督を務めている飯岡さんの作品であるので、その「風」の表現に注目して観ていた。カーテンなどの揺らぎから、「風」を撮影しているな、と感じる部分が多い。体育館や学校、自宅など、場所は様々だが、地域に吹く「風」はすべてをかすかに揺らしている。


自転車好きの男性とアーティストの女性。港区を自転車で徘徊し、面白い場所を見つけると動画や写真に収め、それが作品のモチーフになる。そんな二人の生活を捉えた『oasis』はカラッと楽しい作品。行政の都合で、川の上を高速道路が走り、その影に弱々しく雑草は生きているけど、カメラはそれを批判するでもなく、ただ捉えている。都市との対峙の作法についての記録。自転車好きの男性が街の歴史を説明し、それをふまえて見つけた面白い場所やものが、女性の作品に活きてくる。そんな生活の在り方がすごく理想的だが、実は俺達夫婦+むすこも、割とそういう生活をしているので、なんかすごく深く共感してしまった。ただ、自転車整備場と、アトリエと、生活の場が一緒になっているあの狭くて機能的なな家は羨ましかったな。

もう一組、録音と整音を担当している黄永昌さん夫妻の生活も描かれるのだが、この二組が直接絡むことはなく、片方は目で、片方は耳で、この都市を捉えていくのだ、と考えると、自分の知覚すら拡張されたような感覚になって、とても嬉しい気持ちで帰宅した。

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