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不動産屋寄ってから出社。今日はなかなか効率良く仕事して、早めに退社。シネマカリテで観た『#スージー・サーチ』『Chime』があまりに凄かったので、その後キメようと思っていた『ツイスターズ』は後日に。ちょっと余韻がすごくてね。


ロサンゼルスタイムスがヒッチコックを引き合いに出していた『#スージー・サーチ』。俺は同意する。地元のプチ有名インフルエンサーが誘拐された事件を見事に解決して一躍時の人となるスージー。YouTube的な軽薄演出に多少閉口していたら、それ自体が罠みたいなもんで、真相が叙述トリック的に解き明かされていくと、物語のムードも徐々に陰鬱なものに。

先の読めない展開とはまさにこのことで、「普通、こうはならんだろ」と呆れてしまうような状況にも、のらりくらりと対応していく主人公。その背景には、障害を負ってしまった母親が楔のように存在していて、べたっと張り付いたような笑顔と矯正器具が本当の感情を隠しているのかもしれない。本当にヒッチコック的なのは、トリックや二転三転する物語だけではなく、思わず「あちゃー」と目を覆いたくなるようなラストにある。傑作。


もしこれが90分以上の尺だったら、黒沢清最高傑作だったかもしれない『Chime』。ただ、この密度のものを90分以上維持する困難を思うと、ここにしか正解はなかったのかもしれない。伊藤潤二や楳図かずおの短編、藤子A先生のような澱んだ世界を実写で描いてしまった。とにかく得体の知れない出来事が起こり続ける45分。おそらくは、あり得る可能性の中で一番どん詰まりのものを選択した結果の集積としての物語だと思うので、まともに「正解」を導き出そうとしても徒労に終わるのだと思うが、それでもヒントはある。田代が玉ねぎを刻み続けるのは、甲高い叫びのようなチャイムの音から気を逸らすため。その音を微かに聞いた松岡は、いずれ田代同様に悲劇的な最期を遂げるのであろう。しかし、田代「同様」、彼の脳みそが入れ替わったのだとしたら、それはいつ起こったのだろうか。椅子に座る「見てはいけないもの」を見てしまった時なのか。それとも、インターフォン越しに見た回転する光源を見てしまった時なのだろうか。

同じく傑作『回路』はかなり真正面から悪夢だったが、こちらは変化球。というか、球は投げられたのだろうか?そうめんを食べている最中の田畑智子がおもむろに立ち上がり、たっぷりと三袋分の空き缶をおざなりに捨て始めた時に、こんな恐ろしく滑稽なシーンはないと思った(思うに、あの人、外のゴミ箱に捨てた空き缶、もう一回袋詰めしてますね)。縦糸は「音」だから、渡邊琢磨さんの貢献は計り知れない(個人的には中原昌也さんとの共作だった『激怒』が印象に残ってる)。個人的には、河合優実に続いて、マン・オブ・ザ・イヤー候補の吉岡睦男(『鵜頭川村事件』での小者演技が印象深い)が相変わらず素晴らしい「神経逆撫で声」で主人公を熱演しており、なんてナイスキャストだろうと感動した(トークイベントで御尊顔を拝めてよかったです)。

MCATM

@mcatm

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