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マーティン・エドワーズ『処刑台広場の女』(ハヤカワ文庫)。序盤、基本的には過去の事件を巡る話だし、表題の「女」であるところのレイチェル・サヴァナクが実際に殺しを行っていることは冒頭で示唆されている。そんなシチュエーションで緊迫感もさほど感じされないまま、頁めくる手もなかなか進まなかったのだが、半分を超えたあたり、現在が過去を追い抜いたあたりからトップギアで、止まらない。緊迫した状況下でこちらの認識も二度三度改めさせられる怒涛の展開に感服した。

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大森立嗣監督作は本当に相性が悪くて、何度もハズレを引いているのだが、『星の子』は初めての当たり。相変わらず演出や画が好きじゃなかったり、唐突に脈絡なくアニメ演出を挟み込む辺りにはきちんと閉口したが、新興宗教の信者家族、特に二世を語る上で重要な要素を繊細に描いたところに好感。当然、新興宗教のことを好意的に持ち上げる作品ではないが、同時にそうした信仰に対する眼差しの問題についてもフラットに取り上げ、イシューを上塗りしていく手管が素晴らしい。演出でもいくつか好きなシーンがあって、南先生の似顔絵をしたためた日記帳をカッターで丁寧に切り裂く時の間、とか。ゆったりとした時間に、ちひろの心境を想像させる余地が感じられた。「海路さんのやきそば」というパワーワードに、『ミッドサマー』における「オースティン・パワーズ」みたいな威力を感じた。効能はほぼ一緒で、「私たち、みなさんと同じ価値観持ってますよ」のアプローチ。背後にやきそばを貪る宇野祥平を配したのも良かった(抜きの画はこれみよがしで余計だったけど)。

「原作・今村夏子」で「あっ!」と、納得。原作も読んでみますね。

MCATM

@mcatm

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