Seed

エブリデイ

毎日、違う身体に乗り移る「A」という「人格」が、アンガーリー・ライスに恋をする物語。ちょっとしたファンタジー+SFに、これから来るであろうキラキラした若手女優を充てがったってだけでお釣りが来そうな企画ということで観始めた邪な俺を良い意味で裏切る傑作だった。

アンガーリー・ライスが兎角始終キラキラしているので、それを観ているだけでも幸福なはずなのに、物語がそういった安易な見方を許してくれない。「毎日…?」「違う身体に…?」「乗り移る…?」「Aが…?」「恋をした…?」と、超要約するだけで表出する幾多の「?」に、丁寧に回答を重ねていった結果、そもそも恋愛とは?という問いのみならず、LGBTやルッキズム、家族の在り方や価値観といった現代的な問題に切り込みつつ、シリアスになりすぎないという抜群のバランス感覚を見せたこのマイケル・スーシーっていう監督、只者じゃないと思った。

表層は全然軽薄なティーンムービーをなぞっているのに、鑑賞後は作品内に提示されたいくつもの視点に思いを馳せてしまう始末。「最後は男前に定着してハッピー」みたいな軽薄な結論には至らず、極めて、極めて、我々の一般的な人生そのものに肉薄した問題提起をしてくれるのにはつくづく感心した。

ラストシーンで、Francis and the lights「May I Have This Dance」のカバーバージョン(…クレジットにフランシスの名前なかったので、ちょっと事情わからないんだけど)が流れたところで、「殺す気か!」と。そういう楽曲のチョイスにもたまらんものがあった。

あまりに良くできた映画なのに、ビデオスルーだったのが全く解せない。2018年のボーイ・ミーツ・ガール映画の中でも異色の出来でしょう。

https://www.amazon.co.jp/%E3%82%A8%E3%83%96%E3%83%AA%E3%83%87%E3%82%A4-%E5%AD%97%E5%B9%95%E7%89%88-Angourie-Rice/dp/B07H9H78BW/ref=sr_1_3?ie=UTF8&qid=1538324672&sr=8-3&keywords=everyday

もっと読む

世紀の光

アピチャッポン・ウィーラセタクンの映画を初めて観た。2006年の作品。なんのことだかよくわからない。「何を伝えたくて映画を作っているのかわからない」といえば個人...

2018-09-07 19:02