世紀の光
アピチャッポン・ウィーラセタクンの映画を初めて観た。2006年の作品。なんのことだかよくわからない。「何を伝えたくて映画を作っているのかわからない」といえば個人的にはホン・サンスの名が挙がるが、それ以上に、判然としない。でも、確かにとんでもなく豊かなものを観た気がする。
多くの反復を伴って展開する時間は、ある種の群像劇を描きながら、そのどこにも帰着することはないリニアな時間だ。そう、我々の時間みたいにリニア、戻ることはない。同じセリフが再び発せられる時、そのシチュエーションはどこか彼方、全然違うものになっている。最初は田舎の病院で行われていた診察が、いつの間にか都会の病院へ。女医に恋い焦がれる男性は、いつの間にか存在を無くし、序盤に出てきた男性医の謎の恋愛を描くが、二人は隠れるようにスクリーンから姿を消す。僕らの前には誰も残されていない。
時折、不 穏な自然音を伴い、何らかのモニュメント、銅像、そして排気ダクトがクローズアップされる。ほとんど空気を切り裂くような不吉さを伴って。その度、この映画という名のリニアな時間は色を変えていく。
豊かさの正体。あえて言うのであれば、この僕たちの生きる「時間」と同じように、不安定で意図の不明瞭な「時間」がここには記録されているからなのかな、と思う。
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