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いやーーー最高だったな『アルファヴィル』。ここんとこ暴落一方だったゴダール株が一気に持ち直した。フォン・ブラウン教授と、同僚のアンリを探しにやってきた「イワン・ジョンソン」ことレミー・コーション。ブラウン教授の娘であるナターシャを案内役に、「アルファ都市」とそこを支配する人工知能であるアルファ60と対峙する。

どの部屋にもある「聖書」と呼ばれたものの正体が辞書であって、しかも少しずつ非論理的な言葉が消えていくという世界。論理的ではない行動、例えば涙を流す、などが犯罪とされて死刑になる世界。洗脳のために郊外のマンションに人々を隔離する世界。スタイリッシュかつ無機質に映し出された白黒のパリの街がディストピアと化し、美しく、恐ろしい。ポール・ミスラキによる音楽も重く、効果的だった。傑作。

しかも、明後日観に行くつもりだった『悪は存在しない』の見事なリファレンスにもなっていてタイミングもバッチリ(「悪意は存在しない」と訳されていたが)。資本主義の先にある合理社会において、世界が人間の都合に合わなくなってきたとしても、それは何某かの悪意が働いているのではなく、単なる論理の帰結である、という世界観。アンナ・カリーナの発する最後の言葉は、ベタだが、美しかった。


その後、チラッと『気狂いピエロ』も流してみたんだけど、こちらも記憶通りのド傑作で。やっぱ、決して「未熟」で「単につまらない」映画を撮る監督ではないのよね、ゴダール。

MCATM

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