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根はイイ奴だと信じたいが、かなり自分勝手でメチャクチャな主人公フェリックス。セーヌ川のほとりで夜を明かして踊り狂った女性アルマを驚かすために、彼女の向かった先への旅行を計画する。友人シェリフを道連れに、シェアカーでエドゥアールと知り合うと、ほう、三馬鹿が爆誕したぞ、とワクワクが止まらない。

一回遭っただけの相手に仕掛けるサプライズなんぞが上手くいくわけなく、フェリックスとアルマとの仲がこじれ続けるのに振り回され続けるシェリフとエドゥアール。不愉快だが憎めない登場人物も増え続け、それぞれが少しずつ間違っている、そんな状況に笑っていたら、不意に落涙

『7月の物語』でも印象的だったダンスシーンや、カラオケ。音楽を扱うギョーム・ブラックの手つきはとても穏やかで、その瞬間に永遠を感じさせるような風が吹くように感じる。そんな風に乗って、なんとなく訪れたささやかで多少背徳的な幸せ。この滞在を経てみんなが顔に少しだけ逞しさを湛えるのだとしたら、みんなが少しだけ大人になる、まさに「みんなのヴァカンス」であったのだと思えて嬉しかった。

MCATM

@mcatm

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