Post

昼過ぎからバンドのリハーサルがあったので、昨日の夜中からバックグラウンドで流す音源を制作していた。映画のセリフを切り刻んで、大阪で録音した工事音と重ねていく。インドの街中で録られた客引きの声を「弾く」。取り急ぎ練習用に仕立てて、テープを持って下北沢に向かう。新しいセットとやり方で何度か演奏してみると、前回よりも大分良い感触。


『NN4444』

少し酒を飲んでから帰宅。少しだけ眠って、下北沢K2で『NN4444』。俺の後ろで満席になって焦った。人が入りすぎてる。気鋭の日本人映像作家によるホラー短編4本のオムニバス。全作品良かった(みんな編集が凄すぎる)のだが、その中でも最後の『Void』の出来が良すぎて吹っ飛んだ。昨日観た黒沢清の短編を思い出してしまうような不条理さで、一見何を描いているのかよくわからない。が、そこには何かがある。おそらく、何の脈絡もなく挿入される池田良さんが喫茶店で話しているシーンがキーになっていて、「負の空気」をやり過ごすためには「虚無」になるしかない、という諦念。友人の死に接しても「すっごい、遊ぶじゃん」と、死を軽んじているように見える友人たちの態度に違和感を覚えていた主人公が、「だょね」と遂に飛び込んでしまうと、その瞬間、幾多の身体が横たわって見える。特に主演の野内まるさんの演技が素晴らしかった。


『Kfc』

すっごい悩んだんだけど、そのままイメージフォーラムに『Kfc』を観に行くと、ちょうどその直前に上映していた作品をアップリンク時代の同僚が配給していて、鉢合わせ。おっさんが夜に自転車飛ばして一人汗だくでアジアンスプラッタを観に来ていることがとんでもなく恥ずかしくなっていたのでひどく決まり悪かったが、嬉しかった。

事前に話半分に聞いていた「実はアートフィルム」情報、全く信じていなかったのだが、個人的には蔡明亮が何かの間違いでリチャード・カーンのパロディやってみた、みたいな映画で非常に驚いた。もしくは、ハネケのノワールもの。序盤がほぼ無音だし。とにかく乱暴に時系列を操作しているせいで、途中本気でよくわからない箇所もあって、正直あれはやらない方が良い(例えば、あの金庫を強奪したアクションシーンは、時系列的にどこに配置されるものなの…?)。けど、この監督には明確に描きたいことがあって、不器用だけどそれをやり遂げようとしているので、どうしても嫌いにはなれないよねっ。脚本もその「達成」に向かってよく練られていて、復讐を遂げようとする者は高いところに位置していたり、ジッポやヘッドフォンという小道具を上手く機能させる小粋な技術もある。絶対観るべきとは思わないけど、ちょっとした掘り出しものにはなると思う。スプラッタ描写は概ね後半に寄っており、「あれ?こんなもん?」と思っていた観客を心底うんざりさせるので、その辺も素晴らしいですね。


中目黒経由で帰るので、初めて『光明泉』に入る。狭いのと、ボディソープ・シャンプーがないのが残念ではあるが、人口炭酸湯がなかなか気持ちよかった。

MCATM

@mcatm

もっと読む