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ライブの準備をしながら、昨日今日と2本映画を観た。

蔵原惟繕『狂熱の季節』

真剣に人生を生きることが出来ず、ただただ刹那に生きる明。カフェで外国人客の財布を盗った罪で送られた少年鑑別所から出所すると、鑑別所で出会った仲間と犬のように吠えながらビーチに遊びに行き、そこで偶然自分を密告したカップルと再会する。芸術家でもある女を衝動的に誘拐し、浜辺で陵辱すると、すぐにその責任を取らなければならない立場に追い込まれてしまう。

しかし絶対に大人にならない明は、そこからも刹那的に逃げ続ける。インテリの芸術家が軽薄なロジックを弄び、その野生味の抽象化を試みようとしても無駄。女の個展に赴いて嫌がらせしたり、鶏の毛をむしって家の中で揚げて食べたり、この世のすべてに対して馬鹿にした態度を取り続ける。ジャズ以外は。

「日本ヌーヴェルヴァーグ」と言われていたらしいが、どちらかというとパゾリーニを思い浮かべた。主人公・明(川地民夫)の野生味と、全編鳴り続けるジャズで、ボリス・ヴィアンも想起。地面から舐めるように見上げるカメラと、そこに照りつける太陽との対照で、明はずっと滝のように汗をかき続けている。

周りが否応なしに成長していく中、明だけが変わらず、時の流れに取り残されてしまう。その孤独にフォーカスしていくような柔なセオリーは通用せず、凄まじいスピードのまま異様なオチをつけてみせる。凄かった。

マリオ・バーヴァ『クレイジー・キラー 悪魔の焼却炉

「完全にイカれてる」と、のっけから殺人者の強烈な自己分析が繰り広げられる、マリオ・バーヴァ1970年の監督作。こいつが本当にイカれているのか、そもそもここで起こっていることは現実なのか。ひどく不安定な足場での鑑賞を余儀なくされる俺たち。主人公は有名ウェディングドレスメーカーの社長。結婚を直前に控えた女性、それも主人公の会社の手がけるウェディングドレスを着る予定の女性たちが、次々と手斧で殺害される。何を隠そう、主人公がその連続殺人の犯人であり、死体は所有する豪邸の焼却炉で灰にしてから、観葉植物の肥やしにしている。

この主人公の、結婚に対する強烈なオブセッション。自らの結婚生活も完全に破綻していて、契約モデルと情事を重ねているが、妻(パゾリーニの相方、ラウラ・ベッティ)は離婚に応じようとはしない。そうした過度なストレスの中で、殺人や不貞に走る主人公をジトっと見つめる少年がいる。幼い頃の主人公自身である。

ウェディングドレスを着たマネキンに囲まれた暗い部屋から、妻が傾倒する降霊術のデモンストレーションへと、カットを割ることなくスムーズに移行するショットなど、時折想像もつかないような大胆な映像も挿入されている。あと、全編音楽が非常に効果的。妄執やトラウマの因果が明らかになるにつれて、根本にあった悲劇も顕になる構成も見事だと思った。

MCATM

@mcatm

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