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ムシムシと暑くて、あまり士気の上がらない一日だった。午後になってようやく少し仕事が捗るようになると、今度は打ち合わせや面談が立て込んで、なかなかうまくいかないものだなと思う。

昨日のペイヴメント以降、「バンドが始まる瞬間」を観たい欲が高まっていて、昼食時に30分、山下敦弘監督の『リンダ リンダ リンダ』を観る。俺の大好きな『チア☆ダン』、俺が結構好きな『フラガール』、俺が惜しいと思ってる『スウィングガールズ』みたいなスポ根ものかな、と勝手に思っていたら、それとは全くテイストの異なる、オフビートな傑作だった。夕食後に残り1時間半を堪能。香椎由宇をはじめとするバンドメンバーの皆のキャラが本当によく描けていて、たった2時間弱ですっかり好きになってしまう。とは言え、やはりペ・ドゥナだ。「満を持す」少し前、本番前日の夜の校舎、ステージ上でメンバー紹介の真似事をする姿に爆笑してしまった。「ボーカル!ソン!いえーイクゾー!」本当にこれぐらいの日本語習熟度で撮影に臨んだんだろうな。すっごい気の抜けた顔で、日本語もよく理解していないのに、香椎由宇からのバンドの誘いに「はい」「はい」「いやじゃないよ」と応える様も、松山ケンイチの拙い韓国語での告白に「へえ」と応える様も。最高。

いかんせん、ブルーハーツに対して強い思い入れがない(自分の世代では珍しいと思う)ので、「リンダリンダ」を歌唱するだけで説得可能な状況に共振できない。この映画を味わう時に、そこがやはり大きなハンデとなる。それは確かなんだけど、それでも先述の「メンバー紹介」の直後に「ドブネズミみたいに、美しくなりたい」という声が、ソンの思いを代弁するかのように、暗く孤独な体育館に響くシーンには心を動かされるものがある。友達の超絶歌唱(湯川潮音!!)でなんとなく温まってしまった場に救われて、10分しか与えられないラストの演奏シーンでの盛り上がりは、肝心なところでその喧騒を避けるようなカメラが映し出す人気のない大雨の廊下、玄関、プール、学園祭の残骸の中に薄っすらと響くのみ。青春の始まりと同時にその終わりを捉えるという寂寞の中に物語が幕を閉じていく様は、相米慎二『台風クラブ』を思い出しました。

MCATM

@mcatm

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