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雨。ここ数年で一番快調。どこも痛みなし!とか言ってはしゃいでたら、原因不明のかゆみが至るところで発生。いやだなー。耳の裏がかゆいのとか、寝てる時に掻いちゃうので全然改善しない。という雰囲気で出社。打ち合わせで一日が過ぎていく。

雨。なのでチャリは使えず、電車通勤もストレスである。何より、時間を気にせず映画を観れるという特権が奪われている。就業から終電ギリギリまで頑張って、なんとか『あんのこと』と『ザ・ウォッチャーズ』の二本を鑑賞。

入江悠監督『あんのこと』。母親から売春を強いられ、自己肯定感を失ってリストカットにシャブを繰り返す女性の物語。ブレイクした河合優実に負けず劣らず、佐藤二朗が素晴らしい。役者の力で押し切っていくのかと思いきや、総合的にとても丁寧な作りで安心して観ていられる。特に撮影。被写体近くで手ブレするカメラが、絶対に客観視させない、当事者性を我々観客に強いてくるように思える。

そんな感情が中盤でくすぐられる。例えば、あんが想像以上の面倒見の良さを発揮する介護施設の現場や、夜間学校で日本語を勉強する外国人が給食を食べる姿。自分たちの周辺にあって、目を向けることなく、低解像度のまま他人事として過ごしていたもの。地域社会のリアリティに寄り添うような目線は、見事な撮影の賜物でもあるだろうと思った。

「底辺中の底辺でかわいそうな目に遭う女性が、かわいそう」みたいに終盤に向けてお涙頂戴の展開になってもおかしくないと思っていたが、徹底的にドライ。みなが少しずつ、しかし着実に間違っていて、ここで何度も書いていることだが、それこそが「人間」。どうしようもなくなってシャブに手を出してしまい泣き崩れるあんを慰める多々羅のシーンなど、見事な演技が見れて嬉しかった。


シャマランの娘が撮った『ザ・ウォッチャーズ』も良かった。脱出不能な森の中、「鳥かご」と呼ばれる鏡張りの部屋に閉じ込められた主人公。マジックミラー状のその鏡の向こうで、夜になると何かが彼女らを「見ている」という。いくつかの「なんでそうなる?(特に、軟禁状態で何ヶ月も経過するはずの彼らの格好があまり汚くならないところなど)」はあるし、一つ一つは既視感に満ちた「よくある話」なんだけど、構成の妙と、徹底的な符号化で、少しの妙味が持続しているところが良かった。鳥を動物園に届けに行く仕事の最中である主人公が鳥かごに閉じ込められるという「鳥」のモチーフや、自分以外の何者かに変身するというモチーフ。学習を繰り返す何者かが、AIの暗示のようにも見えた。シャマランの娘っぽいなあ(勝手なんだけど)と思ったのは、やっぱ詰めの甘さと、それを帳消しにするようなケレン味。同様のモチーフを扱った映画に好きなものがいくつかあったので、アイディアだけではあまり評価出来なかったと思うが、それ以外に良いところが散見される佳作でした。

MCATM

@mcatm

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